意外な再会
水月たち三人は、再び冬也の宿、「流」にとどまっていた。水月に半殺しにされたためか、あれからフランツが暴れることはなくなったらしい。
二、三日して、なくなりかけていた携帯食や他の消耗品を買いに市場へと向かう三人。一つの露店の前で立ち止まると、そこの店主が驚きの声をあげた。
「フィレイ、フィレイじゃないか!」
「兄さん!?」
二人のあげた声に、周りにいた人々が何事かと視線を向けた。
「あら、ウォルドさん。お久しぶりです。そこの干し肉と、それから乾パンをください」
「あ、ああ、お久しぶりです。いつも妹がお世話になっています。ちょっと待ってくださいね」
やがて、商品の入った紙袋を渡しながら、ウォルドが尋ねた。
「これからまた、旅へ?」
「ええ、まあ……。近いうちには」
「そうですか。もし、時間が許すようなら、一度家へ来ていただけますか?」
水月は答える代わりにフィレイとアルフに視線を向けた。すぐにアルフがうなずき、フィレイも首を縦に振る。
「という訳なので、何の問題もなくお伺いできます」
その後、「流」に泊まっていることを伝え、ウォルドから翌日、迎えに行くと聞いて、三人は宿へと戻った。
「そう言えば、フィレイとウォルドさん、だっけ。兄妹の割に似てないな」
夕食後、思い出したようにアルフが呟いた。フィレイは栗色の髪に緑の瞳。ウォルドは黒に近い焦げ茶の髪に灰色の瞳。彼の言う通り、顔立ちも全く似ていない二人である。
「うん、兄って言っても義兄だからね。今の母さんの連れ子が、兄さん。でも、良い人だよ」
「へえ。フィレイの家って、ここから遠いのか?」
「えっと、うん、そこそこ距離はあるよ。国も違うしね。カーツはレイルズ公国の町でしょ? 私の家があるのはミトスラ」
「ミトスラっていうと、確か飛び地なんだっけ? ジルクム連合王国の」
「二人とも、詳しいのね」
水月の言葉に、それまで話していた二人がぴたりと口を閉ざし、水月を見た。
「え、知らなかったの?」
「興味ないもの」
ちょっとは知っていた方がいいと思う、とフィレイが呟いた。
水月は答えの代わりに小さく手を振って、部屋を出て行った。
翌日、迎えに来たウォルドと共に、三人はフィレイの家に向かった。馬車を使ってもほぼ一日の道のり。ちょっとした旅行の気分だ。
とはいっても、馬車の中はとてもそんな呑気なことを言える状態ではなかった。
「……気持ち悪い」
「大丈夫?」
馬車酔いしているフィレイと気遣う水月。アルフはアルフで人生初の馬車に固まっている。
ようやく馬車がフィレイの家に着いたときには、三人ともひどく疲れた顔をしていた。
「両親に伝えて来ますから、少し待っていてください」
落ち着いた雰囲気の客間に通される。
「広い家だな」
「ソリス家っていえば、大陸の商人の中で五本の指に入るらしいからね」
「ってことは、フィレイはお嬢様か? すごいな」
急に部屋の外が騒がしくなる。慌ただしい足音と共に、ウォルドが入って来た。
「すみません、確か水月さんは<影祓い>でしたよね」
「そうですけど……。<影>が出たのですか?」
「その、私にはよく分からないのです。とにかく、来ていただけますか? フィレイと、そちらの方も」
ウォルドに着いて行きながら、水月ははっきりと厄介事を感じとっていた。




