表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<影祓い>  作者: 文月 郁
ターベイ編
3/36

五年ぶりの再会

 ベッドに入ったものの、結局、眠れずにいた水月は、寝不足のまま朝を迎えた。

 逆にフィレイは朝まで一度も目を覚ますことはなかった。そのために、水月は彼女を少しうらやましく思った。

 女中に頼んで、冷たい水を持って来てもらい、それで顔を洗うと、だいぶマシになった。朝食を取るために、食堂に向かう。

「どうしたの? 目、真っ赤だよ?」

「ベッドだと、眠れないのよね。めったに使わないから……」

 水月は軽くあくびをした。夜中のことは話さない。フィレイが信じられなさそうに水月を見た。

「それじゃ、いつもどうやって寝てるの?」

「え? いつも布一枚体に巻いて寝てるけど。……待って。そんな驚くこと? カラじゃ普通よ」

 そこで注文した料理がきたので、二人は一旦話をやめた。

 フィレイはフレンチトーストを頬張り、水月はロールパンをちぎっては口に運ぶ。

「村長の娘を助けた〈影祓い〉ってのは、あんたたちか?」

 急に話しかけて来たのは、若い男だった。

「水月、誰かが用事みたいよ」

 フィレイの声に、水月はちらと男を見た。金髪に碧眼。この辺りでは、珍しくない容姿だ。

 パンの最後のひとかけらを飲み込んでから、水月は口を開いた。

「何か、用?」

 男は懐に手を入れ、小さな木の棒を取り出した。それを水月に向けて投げ付ける。

 顔に当たる寸前で受け止め、水月はそれを眺めた。

「ふうん。夕刻に、裏庭で、ね……」

 水月が考えている間に、男は立ち去っていた。

「それ、決闘棒?」

「そうね。本当なら、私の返事を聞くまで待ってなきゃいけないんだけど……どっかに行っちゃったわね。それより、私、決闘を申し込まれる覚え、ないんだけどな」

 手の中の棒を弄びつつ、水月は少し呆れた声で答えた。




 夕方。裏庭には、四人の人間の姿があった。

 水月、フィレイ、若い男、村長。フィレイと村長は、二人の付き添いである。

 水月が、決闘棒を取り出し、男に投げ返した。

「受けるのか」

「あら、受けてほしくなかった? だったら悪いけど、売られた喧嘩は買う主義なのよね」

 水月が言い終わる前に、男が拳を付きだした。とっさに後ろに飛びのく水月。

 間髪を入れず、男が踏み込んだ。しかしその拳は、水月の腹に叩き込まれる前に止まる。

 水月の手が、男の拳を包み込むようにして止めていた。そのまま、男の腹に膝蹴りを決める。

 ぐ、と男が妙な声を上げてうずくまった。がら空きの首筋を、水月は手刀で打った。

 男は声も上げずに倒れた。男を見下ろし、水月は一つため息をついた。

「この人は……とりあえず、部屋に連れて行こうか。いろいろ、聞きたいこと、あるしね」

 水月が男に活を入れた。男は、ぼんやりした顔で辺りを見回した。

 状況が理解出来ていないらしい男に、「ついて来て」と声をかけた。

「さて、と。説明してもらえる? どうして決闘を申し込んで来たの?」

 男は少し経ってから、むっとした口調で水月に聞いてきた。

「五年前のこと、覚えていないのか」

「五年前? ……ああ! 貴方、ひょっとして、アルフ?」

 アルフはうなずいた。

「まさか、覚えてたとはねえ」

 水月は、喉の奥でくつくつと笑った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ