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第5章 ― アリシア王国



馬たちは王国の巨大な門の前で足を止めた。


騎士の一人が俺の方を振り返る。


「到着だ。アリシア王国へようこそ。」


彼は遠くに見える城を指差した。


「この城は五百年以上の歴史を持っている。」


俺は顔を上げた。


その建物はあまりにも大きく、威厳に満ちていた。


まるで現実離れしている。


(完全にRPGの世界じゃないか……)


(露店もあるし、中世風の街並みもある……)


(もしかしてギルドとかあるのか?)


気になった俺は思わず尋ねた。


「すみません……この国にはギルドってありますか?」


騎士は少し不思議そうな顔をした。


「ギルド? もちろんあるぞ。それがどうかしたのか?」


「い、いえ! なんでもありません!」


(よっしゃああああ!!)


(最高の世界じゃないか!!)


(ギルドを作って、ギルドマスターになるのもアリだな……!)


隣を歩いていたルシアンが深いため息をついた。


どうやらかなり疲れているらしい。


体だけではなく、精神的にも。


「このニワトリを国王のもとへ連れて行け。」


そう言ってから、小さく付け加える。


「……これ以上時間を無駄にしたくない。」


俺は彼を見上げた。


「ご両親のことですか?」


ルシアンの足が一瞬止まった。


「……ああ。」


俺は静かにうなずく。


(なるほど。)


(悲しい過去を持つクールな騎士か。)


(お約束だな。)



やがて王城の大きな扉が開いた。


俺たちは玉座の間へ足を踏み入れる。


中央には豪華なマントを身にまとった男が座っていた。


国王だ。


その隣には白髪の魔導師。


さらに多くの貴族たちが並んでいる。


そして――


俺たちが入った瞬間、その場の全員がひざまずいた。


もちろん俺も。


(まあ、この世界ではこうするのが礼儀なんだろう。)


しかし貴族たちは驚いた顔をしていた。


ニワトリが国王にひざまずく。


どうやらかなり珍しい光景らしい。



ルシアンが前へ進み出る。


「陛下。到着が遅れたことをお詫びします。」


軽く頭を下げた後、報告を始める。


「私はこの生物の力を確認しました。」


「魔法を扱うニワトリです。」


国王はわずかに微笑んだ。


「気にする必要はない。」


「こちらも噂は聞いていた。」


「私でも同じことをしただろう。」


俺は目をぱちぱちさせる。


(えっ……?)


(この王様、めちゃくちゃまともじゃないか?)


もっと冷酷で偉そうな人物を想像していたのだが。


むしろ優しそうだ。



国王が立ち上がる。


貴族たちも続いて立ち上がった。


「ルシアン。報告を続けよ。」


「はっ。」


ルシアンは一瞬だけ俺を見る。


そして話し始めた。


「このニワトリは言葉を話します。」


「治癒魔法を扱います。」


「さらに炎の魔法も使用します。」


そこで一度言葉を切った。


部屋の空気が変わる。


「そして何より――」


「祝福を持っています。」


「七聖獣の祝福です。」


その瞬間、玉座の間が静まり返った。



一人の貴族が吹き出した。


「聖なるニワトリだと?」


「冗談も大概にしてくれ。」


ルシアンは静かに目を開く。


「私は嘘をつきません。」


「測定石も嘘をつきません。」


貴族は黙り込んだ。



国王は落ち着いた声で言う。


「七聖獣は古い伝説だ。」


「だが、それが事実なら――」


彼は俺を見た。


「お前は特別な存在ということになる。」



背筋に寒気が走る。


(ちょっと待て。)


(七聖獣?)


(なんだか話が大きくなってきたぞ……。)



俺は翼を上げた。


「質問があります。」


「なんだ?」


「さっき、僕が二人目だと言いましたよね?」


「最初の一人は誰なんですか?」


国王は即座に答えた。


「剣士だ。」


「テツヤ。」


「彼は牡牛の祝福を持っている。」


「さらに天使の力まで授かっている。」


俺は飛び上がった。


「えぇぇぇぇぇっ!?」


(天使!?)


(絶対強いやつじゃん!!)


貴族たちが呆れたようにこちらを見る。


「ニワトリが叫んでいる……。」


「信じられん。」



国王が手を上げる。


「静かに。」


そして続けた。


「その剣士は現在任務中だ。」


「七つの大罪を追っている。」


俺は固まった。



(待てよ……。)


(七聖獣。)


(七つの大罪。)


(まさか……。)


(ラスボス案件じゃないだろうな!?)



俺は再び尋ねる。


「聖獣の加護を持つ者同士なら、お互いを感じ取れたりしないんですか?」


国王は首を横に振った。


「できない。」


「かつて彼らは共に存在していた。」


「だが今は互いを感知できない。」


「そういうものだ。」


「残念ですね……。」


俺は肩を落とした。



すると突然、ルシアンが口を開いた。


「俺も同感だ。」


全員が彼を見る。


「その方が楽だからな。」



国王は最後に告げた。


「いずれにせよ。」


「お前は敵ではない。」


彼は真っ直ぐ俺を見据える。


「本日より見習い騎士として登録する。」


「階級はブロンズ。」


「明日から任務を開始しろ。」


「ルシアンの監督下でな。」


俺はしばらく沈黙した後、


「……はい、陛下。」


と答えた。



(俺はただ静かなニワトリ生活を送りたかっただけなんだ……。)


(どうして神話レベルの戦争に巻き込まれてるんだよ!?)



宮殿を出た後、ルシアンが俺を見る。


「今日から俺の家に泊まれ。」


「監視が必要だからな。」


俺はため息をついた。


「……了解です、隊長。」



こうして――


俺の騒がしい新生活は、まだまだ続いていくのだった。

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