第4章 ― ツバサ VS ルシアン
一人の騎士が、ルシアンと俺の間へと歩み出た。
その手には、奇妙な半透明の石が握られていた。
— 戦闘開始の前に、戦士たちの戦闘力を発表する。
俺は首をかしげた。
{戦闘力レベル?}
{まるでRPGみたいだな。}
{この世界の習慣ってやつか?}
ルシアンは小さく笑みをこぼした。
— その顔、まるで驚いてるな。小鳥ちゃん。
— えっと…
— まあ、所詮お前は鳥だ。人間の習慣なんて知るわけないか。
{これは、友達にはなれなさそうだな…}
騎士が石を掲げた。
— 始める。
彼はルシアンへと石を向けた。
石が光り始める。
— ルシアン、霊騎士。
— 戦闘力:3000。
— 風の加護。
— 特技:速度と精霊召喚。
観衆から感嘆のざわめきが起きた。
3000という数値は、すでに異常とされるレベルだった。
そして騎士は俺へと向き直る。
— では次…
石が俺へ向けられる。
一秒。
さらに一秒。
その時――
CRAAK!
石が真紅に染まった。
そこから強烈な熱が放たれる。
— うああっ!
騎士は即座にそれを手放した。
金属の手袋をしていたにもかかわらず、その手は火傷していた。
石は地面へ落ちる。
人々が一斉に後ずさった。
村に沈黙が広がる。
ルシアンですら笑みを消していた。
石を見つめ、険しい表情を浮かべる。
— まさか…
— そんなはずは…
騎士が息を整えながら言う。
— せ、戦闘力…
喉を鳴らす。
— 12000。
村がどよめきで爆発した。
— 何だと!?
— 12000だと!?
— ありえない!
— ただの鳥が!?
騎士は続けた。
— それだけではない。
声が震えている。
— 対象は七聖獣の加護を持っている。
一瞬で沈黙が戻った。
— さらに…
— フェニックスの加護だ。
――――
{フェニックスの加護?}
{ちょっと待て…何だって?}
俺は空を見上げた。
{詐欺神め…}
{フェニックス系の力が欲しいって言っただけだろ!}
{フェニックス“そのもの”にされるなんて聞いてない!}
――――
驚くことに…
ルシアンは大声で笑い出した。
— アハハハハハ!
村人たちは一斉に身を震わせる。
— すごいな…
彼は目尻の涙を拭った。
— わかったよ。
ゆっくりと剣を抜く。
— それが、お前の特別さの理由か。
その瞳が輝いた。
— ますます戦いたくなった。
俺は深くため息をついた。
{ただ静かに種でも食べていたかっただけなのに…}
{なんでこんな面倒なことに…}
――――
— よし。
俺は一歩前に出た。
— やろう。
ルシアンは即座に戦闘態勢に入る。
風が彼の周囲を回り始めた。
— 準備しろ。
— やってみる。
— もっと本気でやれ。
— もうこいつ嫌いだ。
――――
BOOM!
ルシアンが消えた。
群衆が悲鳴を上げる。
圧倒的な速度。
次の瞬間、俺の背後に現れる。
剣が空を裂いた。
しかし本能で横へ跳ぶ。
刃はわずか数センチで羽をかすめた。
— いいな。
ルシアンが笑う。
— 鳥のくせに。
— ありがとう…なのか?
俺は跳躍し、彼へ突っ込む。
爪が地面を叩く。
そして蹴りを放つ。
ルシアンが受け止める。
衝撃で地面が揺れた。
— 強いな。
— よく言われる。
— 誰にだ?
— 種に。
— …
— …
— お前、本当に変だな。
――――
ルシアンが距離を取る。
そして手を掲げた。
— 火の精霊。
炎が現れる。
— 風の精霊。
風が炎を包む。
火球が巨大化していく。
— 行け!
火の塊が飛んでくる。
俺はそれを見た。
そして思い出す。
{俺はフェニックスの加護を受けている。}
{火は本来、俺の領域じゃないか?}
深く息を吸う。
そして――
その火球を丸呑みした。
村が完全に固まる。
— …
— …
— 火を食ったぞ!?!
――――
ルシアンすら言葉を失う。
— 今の、食ったのか?
— なんとなく。
――――
俺の羽が一瞬だけ光った。
体の中を奇妙なエネルギーが流れる。
加護が反応しているようだった。
――――
ルシアンが眉をひそめる。
— ならば…
— 土の精霊!
地面が爆発する。
巨大な岩のゴーレムが現れた。
村人たちが一斉に後退する。
ゴーレムが拳を振り上げる。
そして――
BOOM!
俺はギリギリで回避する。
家の屋根が吹き飛ぶ。
— おい!
— ちゃんと狙え!
— ゴーレムが下手なんだよ。
— お前が操作してるだろ!
――――
ルシアンは無視した。
— 水の精霊!
巨大な水球が俺を包む。
一瞬で動きを封じられる。
息ができない。
{まずい…}
{かなりまずい…}
ルシアンは距離を保ち、冷静だった。
まるで戦略家のように。
――――
その時。
俺は気づいた。
すべての攻撃。
すべての精霊。
すべてがルシアンと繋がっている。
――――
{なら、あいつに当たれば…}
――――
翼を畳む。
そして突っ込む。
全力で。
風が爆発する。
自分でも理解できない速度。
さらに加速する。
――――
— どこだ!?
ルシアンが叫ぶ。
初めて焦りの色。
――――
俺は目の前に現れる。
そして――
殴った。
一撃。
BOOM!
ルシアンが吹き飛ぶ。
剣が手から離れた。
数十メートル先まで転がり落ちる。
水の球が消える。
精霊も消滅した。
戦いは終わった。
――――
村は静まり返る。
誰も動かない。
誰も喋らない。
そして子供が叫んだ。
— あの鳥が勝った!
一気に歓声が広がる。
――――
騎士たちは信じられない顔をしていた。
霊騎士ルシアン。
それが敗北した。
――――
俺は息を整えた。
そして騎士たちを見る。
— で…
咳をする。
— 城に行っていいか?




