表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
3/35

第3章 ― ちょ、待て!なんで俺が悪役扱いなんだ?俺はただの鶏だって言ってるだろ!

この世界に来てから、すでに一ヶ月が経っていた。


正直なところ、生活はそこまで悪くない。


まぁ、魔法はまだあまりうまく扱えないが。


そもそも魔法を使うのは人生で初めてだ。


それでも、状況は順調だった。


村の住民たちは俺のことを気に入っていた。


彼らにとって俺は「祝福された鶏」らしい。


中には幸運を運ぶ存在だと言う者までいる。


さすがに大げさだと思う。


確かに、病人を治したりすることはある。


誰かが困っていれば手を貸すこともあった。


だが、それだけだ。


少なくとも俺の感覚では。


――――


その日の朝、太陽はすでに高く昇っていた。


暑さは息苦しいほどだ。


のんびりと種をついばんでいると、異変に気づいた。


蹄の音。


それも、かなりの数だ。


顔を上げる。


遠くから騎馬の一団が村へ近づいていた。


村人たちは慌てて家から出てくる。


そしてその表情はすぐに変わった。


明らかに緊張している。


不安の色が濃い。


騎士たちの鎧には、太陽の紋章が刻まれていた。


それが何かの意味を持つことはすぐに分かる。


――――


一団は村の中心で止まった。


一人の男が馬から降りる。


紫がかった長い髪。


洗練された鎧。


そして鋭い眼差し。


兜を外し、静かに口を開いた。


— 我々はある噂について調査に来た。


村が一斉に息を呑む。


— “異常な力を持つ聖なる鶏”についての噂だ。


間を置く。


— 既に察していると思うが、我々は王国の騎士だ。


ざわめきが広がる。


村人の一人が恐る恐る手を上げた。


— は、はい…確かに魔法を使う鶏がいます。


ルシアンはその人物を見る。


— なぜその存在を探している?


— ただ質問したいだけだ。


――――


翼を一度動かす。


そして前へ出る。


どうせ話題は自分だ。


— こんにちは。


全員の視線がこちらに集まる。


— 俺がその鶏だ。


沈黙。


この世界には喋る動物もいるが、それでも騎士たちは驚いている様子だった。


続ける。


— 質問は何だ?


ルシアンは数秒間、俺を見つめた。


まるで目の前の存在を理解しようとしているかのように。


そして言った。


— 七つの大罪と関係があるか?


――――


村が一瞬で凍りつく。


空気が変わる。


視線。


ざわめき。


不安。


さっきまで笑っていた者たちまで、表情を曇らせていた。


俺はわずかに視線を落とす。


七つの大罪?


そもそも何だそれは。


だが、この反応を見る限り――


ろくなものじゃないのは分かる。


――――


— あるわけないだろ!


即答する。


— なんで俺がそんな組織に入るんだ?


家を指す。


— 村を壊したこともない。


— 人を襲ったこともない。


— ケガ人は治してきた。


そして胸を張る。


— それに俺は鶏だぞ!


――――


数人の村人が目を伏せる。


何かを思い出したように。


俺は多くの人を助けてきた。


――――


ルシアンは黙っていた。


やがて静かに頷く。


— 分かった。


その声は真剣だった。


— 現時点で、君を疑う証拠はない。


少し安心する。


— だが…


やっぱり来た。


— 噂は消えていない。


腕を組む。


— 王国へ来てもらう必要がある。


— 確認するためだ。


— 確認?


— 嘘を見抜く神器がある。


少し考える。


そして肩をすくめる。


— いいぞ。


隠すことは何もない。


――――


ゆっくりと前へ進む。


ルシアンはその様子を見ていた。


そしてわずかに表情が変わる。


決断したような顔だ。


— 待て。


— ん?


— その前に…


剣の柄に手をかける。


村が息を呑む。


— 力を試したい。


— 力?


— ああ。


視線は外さない。


— 正体不明の存在。


— 特殊な力。


— そして危険視される噂。


剣を抜き始める。


— 君が何者なのか知りたい。


――――


剣を見る。


ルシアンを見る。


また剣を見る。


またルシアンを見る。


――――


{いや、俺何した?}


――――


— 分かった。


ため息をつく。


— それで終わるならな。


構える。


鶏なりの戦闘姿勢で。


――――


ルシアンが剣を掲げる。


俺は翼を広げる。


風が吹く。


村は静かに見守る。


こうして――


初めての戦いが始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ