第2章――それが騎士としての俺の務めだ
俺は、自分の両親をほとんど知らない。
少なくとも……そう思っている。
その代わり、俺には二体の木製人形があった。
五歳のとき、自分で作ったものだ。
それ以来、そいつらは俺の「家族」になった。
変な話なのは分かっている。
だが、その方が楽だった。
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俺は孤児院で育った。
友達はほとんどいなかった。
口数も少なかった。
そして、紫色の髪も厄介だった。
他の子供たちは俺を悪魔だと言った。
だが、それは違う。
悪魔は紫色の肌をしている。
俺は髪が紫なだけだ。
まったく別の話だ。
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俺は幼い頃から強くなった。
剣術。
集中力。
精神操作への耐性。
冷静さが求められるものなら、何でも得意だった。
まるで、この世界で戦うことだけが俺に与えられた役目みたいに。
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十九歳のとき。
俺は王の前に立っていた。
玉座の間には重苦しい静寂が流れている。
「ルシアン」
王が俺を見下ろした。
「本日より、お前を正式な騎士として認める」
「二つ星騎士だ」
俺は片膝をついた。
「はっ、陛下」
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俺はあいつらのために頑張った。
俺の両親のために。
……二体の木製人形のために。
返事をしてくれることはない。
動くこともない。
それでも俺は進み続けた。
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それから五年が経った。
今の俺は二十四歳。
人々は俺を『精神の騎士』と呼ぶ。
信頼される戦士。
尊敬される騎士。
誰もが知る存在。
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だが、本当のことを知る者はいない。
人々はよく言う。
「ご両親もきっと誇りに思っているでしょう」
俺はいつも笑顔で答える。
だが心の中では――
思うんだ。
両親って……誰のことだ?
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今日も俺は城門の前に立っていた。
穏やかな風が吹いている。
そこへ、一人の兵士が息を切らしながら駆け寄ってきた。
「ルシアン様……ご報告があります」
俺は兵士を見る。
「言え」
兵士は少し迷った。
「奇妙な生物が発見されました」
「生物?」
「ニワトリです」
俺は思わず瞬きをした。
「……」
「その存在は――『神聖なるニワトリ』と呼ばれています」
沈黙。
空気が少し変わった気がした。
「冗談か?」
「いえ」
兵士は唾を飲み込む。
「炎の魔法と治癒能力を使うらしく……村人たちは生きた奇跡だと噂しています」
俺は静かに剣の柄を握った。
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「ニワトリ……だと?」
俺の目つきが鋭くなる。
「お前たちは、それを何だと思っている?」
兵士は声を潜めた。
「一部では……」
「七つの大罪と関係があるのではないか、と」
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俺は目を閉じた。
そして、ゆっくりと開く。
全身に緊張が走る。
「そうか」
一歩前へ出る。
「出発の準備をしろ」
風が重く感じられた。
「俺が直ちに向かう」
剣を抜く。
「正体が何であろうと」
「この目で確かめる」
俺は城へ背を向けた。
そして静かに呟く。
「それが――騎士としての俺の務めだ」




