第32章:Bチーム対『暴食』
「アハハ! もう諦めるのかい? ……一つ秘密を教えてやろう」
ゴーラは顎を拭い、獲物を狙うような笑みを顔に刻んだ。
「俺は人を食らうたびに、その者の魔能力を吸収するんだ。五百年もの間、どれほどの強者を飲み込んできたことか!」
タルは槍を地面に突き立て、腕を組んで冷徹に言い放った。
「そんな話をすれば、私が恐怖で震え上がるにでも……?」
「うわぁ……! なんてイイ女だ!」テンコが敵を前にして、あろうことか感嘆の声を上げた。
ゴーラは恐怖を見せない彼女たちに苛立ちを募らせる。
「おい、そこの紫髪の女。お前のふてぶてしい態度、本気でムカつくな! 死を恐れて泣き叫ぶ弱々しい少女はどこへ行ったんだ?」
タルは冷ややかな笑みを浮かべた。
「アハハ……なるほどね。期待を裏切って悪いけど、私は半魔なの。種族を問わず、魔族に軟弱な奴なんていないわ。泣き叫ぶ姿を期待していたなら、相手を間違えたようね」
「あぁ、半魔か! なら納得だ!」テンコが満面の笑みで頷く。「お前さんの種族がみんなそうなら、直接国に挨拶に行けばよかったな!」
ゴーラは興味深げに唇を舐める。
「半魔か……美味そうだな。昔食ったことがある。お前は何の種族だ?」
「オーガよ」タルが短く答えた。
ゴーラの表情が嫌悪に歪む。
「……オエッ。オーガの肉は固くて不味いんだ。……死ね」
ゴーラがゆっくりと手をかざすと、巨大な風の刃が空気を切り裂き、タルへと殺到した。だが、彼女は微動だにしない。タルもまた片手を突き出し、同じ風の渦を放つ。二つの攻撃が正面から衝突し、大爆発とともに相殺された。
「くだらない」タルは言い捨て、槍を握り直す。「行くわよ!」
「うおおおおお! これでも食らえ!!」ホーネギョが咆哮し、凄まじい速度で突進する。
水の精霊が地面を強打すると、大地が激しく割れ、間欠泉が破壊的な波となって噴出した。
続いてテンコが、黄金色のオーラを纏った剣を振りかざす。
「はあっ! 俺の『太陽の剣』を味わえ!」
後方では、隊長ジオが両手を合わせ、強大な氷の魔術を詠唱していた。
タルもまた槍を旋風のように振り回し、死の竜巻を作り出す。
四人の連携は完璧だった。
「太陽の衝撃!」テンコが叫ぶ。
「荒れ狂う波濤!」ホーネギョが咆哮する。
「槍の竜巻!」タルが叫ぶ。
「四属性の激突!」ジオが魔法を解放する。
圧倒的な攻撃の嵐がゴーラを襲う。しかし、巨体に似合わぬ敏捷さで、ゴーラはその核心を回避した。
「アハハ! そんなものか――」
だが、言葉は続かなかった。着地した瞬間、Bチームの追撃が容赦なく降り注ぐ。
「はっ!」
タルが一瞬の隙に槍を振るい、ゴーラの右腕を切り飛ばした。ゴーラが三歩後退して距離を取ろうとするが、テンコがそれを許さない。着地した瞬間に太陽の剣が閃き、怪物の足を断ち切った。
「ぐあああっ! よくも!」
ジオが両手を突き出し、絶対零度の冷気を放射してゴーラの左腕を凍りつかせると、テンコが間髪入れずその腕を粉々に粉砕した。
無防備になったゴーラに、影が落ちる。ホーネギョが飛びかかり、爪を立ててその頭部を凄まじい暴力で引き裂いた。ダメ押しとばかりに、テンコが輝く剣を怪物の心臓に深く突き立てる。
ゴーラの肉体は塵となって地面に崩れ落ちた。
「アハハハ! チョロいもんだぜ!」ホーネギョが手を払いながら笑う。
「いや……まだ終わっていない」テンコが表情を険しくし、剣を構えたまま呟く。
四人の視線の先、焦土の端から影が姿を現す。
「クソッ……本体を破壊しやがって」聞き覚えのある声が響く。「予備をいくつか作っておいてよかったよ」
彼らの驚愕の目の前で、ただの死体と思われていたものが変異を始める。骨が軋み、肉が膨れ上がり、醜悪なまでの変形を経てゴーラの姿に戻っていく。彼は『予備の肉体』を消費して復活したのだ。
ゴーラは首を鳴らし、歪んだ笑みを浮かべる。
「ああ、こっちの方が調子がいい……。遊びは終わりだ。ここからは、俺の番だぞ」




