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第20章 ― 信じてくれ

ツバサはテツヤを見た。


— テツヤ……俺を投げてくれない?


— ……ああ、なるほど。


テツヤの顔に笑みが浮かぶ。


— いいだろう!


彼はツバサを掴み、全力でホーネンギョへ投げ飛ばした。


— ありがとう!!!


— 何やってんだお前は!?とキックが叫ぶ。


ツバサはそのままホーネンギョの髪を掴む。


— お前も一緒に来い!


— ぐあああ!離せ、この呪いの塊が!


二人は森の外へ吹き飛ばされ、数十メートル転がった後、大きな平原に止まった。



— テツヤ、お前正気か!?なんでそんなことを!?とキックが叫ぶ。


テツヤは腕を組む。


— 俺は弟を信じている。あいつが一人でやると言うなら任せるだけだ。


彼は通路の前に立った。


— 誰も通さない。


ゴウは元の姿に戻り、ため息をついた。


— 魔法使いさん、落ち着いてください。もう起きたことは仕方ない。


キックは歯を食いしばったが、やがてため息をつく。


— くそ……無事でいてくれよ。



— テツヤーーー!キックーーー!!


全員が振り向く。


— え?ルシアン!?


ルシアンが全力で走ってきていた。タルも一緒だ。


— どうしてここに!?修行はどうした!?


ルシアンは俯く。


— 俺……修行をやめてでも助けに来た。


テツヤは彼の額を軽く叩く。


— はぁ……強がりのくせに、本当は優しいやつだな。


ルシアンは少し顔を赤くする。



— で、その女の子は?とキックが言う。


タルは手を挙げて笑う。


— 私はタル!ルルの未来の妻です!


一瞬、沈黙が走った。


テツヤとキックは固まる。


驚いていたのは「未来の妻」という言葉ではなく……


その呼び方だった。


ルル?


— お、おい!その呼び方はタルだけだ!例え伝説でも無理だ!


— ははは、わかったわかった、とテツヤは笑う。



自己紹介が終わった後、ルシアンは辺りを見回した。


— ところで……ツバサは?


今度は誰も答えない。


ゴウもテツヤもキックも視線を逸らす。


— ……まさか……


— ああ、いや……俺があいつをモンスターのところに投げた。そのまま二人きりだ。


— はあああ!?


ルシアンは青ざめる。


— あんな奴と一人で!?死ぬぞ!!


— 信じろ、とテツヤ。


ルシアンは拳を握る。


— ……ああ……そうだな……


だがその顔には明らかな不安があった。



その頃――


ツバサはゆっくり立ち上がった。


— うう……着地失敗だ……


— 大丈夫か?


その瞬間、ホーネンギョの爪が襲う。


ツバサは飛び退く。


— お前の攻撃は単純すぎるな。


— お前はただの鳥だ。簡単に殺せる。


ツバサは深く息を吸う。


そして一歩前に出る。


— なあ……


ホーネンギョが見下ろす。


— なんだ、鳥。


ツバサは少し迷った後、言った。


— お前……一人なのか?


笑顔が消えた。


風が止まる。


森の音さえ消えたようだった。


しばらく沈黙が続く。


そしてホーネンギョは小さく言う。


— ……なんでそれを知ってる?


ツバサは唾を飲む。


— わからない……でも……


彼はその目を見た。


そこには初めて――


悲しみがあった。


— ずっと怒ってるやつってさ……たぶんただ寂しいだけなんじゃないかって思って。


ホーネンギョの体が震える。


— 黙れ……


— 俺も、ひとりの気持ちは知ってる。


— 黙れ!!!!


一瞬でホーネンギョが目の前に現れる。


バキッ!!


拳がツバサの首に叩き込まれた。


ツバサは吹き飛ぶ。


血が飛び散る。


— がはっ……!


首に手を当てる。


血。


大量の血。


— や……だ……


呼吸が苦しい。


寒い。


とても寒い。


— 死にたく……ない……


ホーネンギョは笑う。


— アハハハハ!理解しようとした結果がそれか!


視界がぼやける。


赤い空が暗くなる。


そして――


すべてが黒に染まった。


声が聞こえる。


— ツバサ……


知っている声。


— ツバサ……


神の声じゃない。


これは――


自分の声。


— ツバサ……目を開けろ。


そして彼は理解する。


その声は――


自分自身だった。



第20章・終わり

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