第13章 ― 思いがけない出会い
ユカタと旅を始めてから、すでに二十四時間が経っていた。
その間、彼は自分の冒険談をいくつも語ってくれた。
どれも信じられないような話ばかりで、正直かなり面白かった。
……ただ。
(なんでだろうな……こいつ、どこか怪しい気がする)
(いや、たぶん俺の勘違いだ)
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— へぇ……君がフェニックスの加護持ちのニワトリかい?
ユカタが興味深そうに僕を見る。
— それで、その力はどんなことができるんだ?
僕は翼で頭をかいた。
— 正直なところ……よく分からない。
全員がこちらを見る。
— 魔法に目覚めてまだ半年くらいだし、ほとんど何も分かってないんだ。フェニックスの力も、まだ全然だよ。
ユカタは少し考えるように目を細めた。
— ふむ……それは珍しいね。
そして軽く笑う。
— まあ、焦る必要はないか。
— うん、僕もそう思う。
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その時、キックが手を上げた。
— そろそろ国境に到着します。
彼は僕たちを見た。
— ツバサ、ルシアン。渡された書類を出してください。検問です。
巨大な石の門の前に立つ門番の悪魔を指さす。
ユカタも紙を取り出した。
— 非悪魔は全員、入国許可書が必要なんですよ。
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馬車が止まる。
門番の悪魔がユカタを見る。
— ようユカタ。また商売か?
— はは、順調ですよ。そちらの国はいい客が多い。
— まあな。
視線がこちらに移る。
— そいつらは?
— ただの乗客です。グルア王国まで送るだけで。
— 書類は?
ユカタが顎で示す。
— そっち。
門番は紙を確認する。
— ……アリシア王国の派遣か。通ってよし。
書類を返される。
— もうすぐ三キロ先にテツヤがいるはずだ。
僕の目が輝く。
— おお!加護の兄貴!
門番が僕を見る。
そして吹き出した。
— ハハッ、変な兄弟だな。人間とニワトリが兄弟かよ。
頭をかく。
— まあ悪魔だしな、細かいことは気にしねぇ!
大笑いする門番。
— 行け行け!
— ありがとう!
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再び旅が進む。
ユカタが僕を見る。
— テツヤが兄貴?
— うん。
— 本当に?
— うん。七聖獣の加護は家族みたいなものだから。
少し考えてから僕は笑った。
— まあ、そういうのも悪くないかなって思ってる。
ユカタは微笑んだ。
— いい関係だね。
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数時間後。
遠くに人影が見えた。
— おーい!兄貴ー!みんなー!
テツヤが手を振っている。
僕はすぐに飛び降りた。
— テツヤ!!
そのまま肩に飛び乗る。
— 六日ぶりだぞ!
— 長いよ!キックが驚いてるじゃん!
キックが叫ぶ。
— お前、もう着いてると思ってたぞ!
テツヤは笑いながら首を振る。
— 一度は入国したけど、情報整理で戻ってた。
彼の表情が真剣になる。
— 重要な話がある。
空気が変わった。
ユカタも黙る。
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— まずルシアン。修行の件は予定通りだ。
ルシアンは小さく息を吐いた。
— ……分かった。
— 次に。
テツヤの声が低くなる。
— 暴走している“憑依体”についてだ。
沈黙。
— あれは外部の精霊じゃない。
— 元からその悪魔自身が原因だ。
キックが眉をひそめる。
— どういうことだ?
— 力を求めすぎた結果、自我が崩壊した。
テツヤは目を伏せた。
— そして暴走した。
僕は背筋が冷たくなる。
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キックは拳を握った。
— 力を求めすぎる者は嫌いです。
テツヤは小さく頷く。
— もう手遅れだ。
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そして突然、空気が軽くなる。
テツヤが笑った。
— まあ、今はそれよりこっちだ。
彼は赤い球体を取り出す。
キックの目が見開かれる。
— それはまさか……!
— 赤の魔術師の遺物だよ。
— うおおおおお!!
キックが叫ぶ。
— 俺の人生の師だ!!
— 持ってたのかよ。
— 山ほどあるぞ。
キックは涙目で球体を抱えた。
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テツヤは手を振る。
— 全員集まれ。
そしてユカタを見る。
— あんたもな。
— 俺も?
— 送ってくれた礼だ。
ユカタは笑う。
— 助かります。
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球体が地面に落ちる。
赤い魔法陣が広がる。
視界が歪む。
身体が浮く。
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そして――
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気づけば、そこは別の世界だった。
空は赤く燃えている。
建物は黒い石でできている。
空気が重い。
僕は呆然とする。
— ここが……
テツヤが笑う。
— ようこそ、悪魔の国へ。
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ルシアンは静かに言った。
— ここで別れる。
— 修行場所に向かう。
ユカタも軽く手を上げる。
— 俺もここまでだな。
— じゃあね。
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テツヤが前を指す。
黒と金の巨大な城。
— 行くぞ。
— 王のもとへ。
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その頃。
ルシアンは一人歩いていた。
— この道で合っているはずだ……
その時。
— あら?
女性の声。
ルシアンが固まる。
— その声……
ゆっくり振り返る。
紫の髪。
尖った耳。
明るい笑顔。
— 久しぶりね、ルル。
ルシアンの瞳が揺れる。
— テラ……
彼女は駆け寄る。
— 「久しぶり」ってそれだけ!?
— 10年ぶりよ!?
ルシアンは目を逸らす。
— こういうのは苦手だ……
彼女は笑う。
— そこは昔から変わらないわね。
そして――
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彼女は彼にキスをした。
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突然の出来事に、ルシアンは完全に固まる。
顔が真っ赤になる。
周囲も時間も止まったようだった。
彼は完全に動けなかった。
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第13章 ― 思いがけない出会い 完




