第9章 ― まさかの来訪者!!
それから二日が過ぎた。
その間、僕はキックと一緒に魔法の修行をしていた。
……いや、「習得していた」というのは少し盛りすぎかもしれない。
建物を燃やさずに小さな炎を出せるようにはなった。
二回に一回だけ。
それでも、大きな進歩だ。
けれど――
どうしても頭から離れないことがあった。
『決して、“傲慢”の仮面を外すな。』
神の言葉。
なぜなんだろう。
あの仮面の下には、一体何があるんだ?
気になって仕方がなかった。
そしてもう一つ。
ルシアンの姿を、二日間見ていない。
⸻
— 彼がどこへ行ったのか、気になりますか?
ふいに声をかけられ、僕は顔を上げた。
キックが、いつの間にか隣に立っていた。
— あ……うん。
キックは小さくため息をつく。
— やっぱりね。
腕を組み、少しだけ苦笑した。
— 実は彼……テツヤに会いに行ったんです。
— ……え?
— 戦いの前に、彼のもとで修行するためですよ。
僕は言葉を失った。
— どうして……何も言ってくれなかったの?
キックは少し寂しそうに笑った。
— 怖いからですよ。
— ……怖い?
— 今回の戦いで、一番死ぬ可能性が高いのは……彼です。
静寂が落ちた。
— 彼は認めないでしょうけどね。
— 私たちに心配をかけたくなかったんですよ。
僕は視線を落とした。
……らしいな。
本当に、あいつらしい。
何でも一人で抱え込んでしまう。
その姿が、ふと昔の友達と重なった。
困っているくせに、絶対に助けを求めない人だった。
必要な時ですら。
思わず、小さく笑ってしまう。
— 本当に……馬鹿だな。
キックが不思議そうにこちらを見る。
— 怒らないんですか?
僕は首を横に振った。
そして顔を上げる。
— でも、帰ってきたら教えてあげないと。
— 一人で抱え込まなくてもいいって。
僕は翼をぎゅっと握った。
— だから、修行を続けよう!
その言葉に、老魔導士は大きく笑った。
— はははっ!
— その意気ですよ!
⸻
そして――
決戦の日がやって来た。
僕たちは再び、あの町へと戻っていた。
“傲慢”と出会った場所。
そこには、すでにキックと僕がいる。
だが――
ルシアンの姿はない。
僕は眉をひそめた。
時間に厳しいあいつが、遅刻なんて。
何かあったのだろうか。
⸻
目の前では、“傲慢”が待っていた。
仮面のせいで表情は見えない。
それでも、苛立っているのが伝わってくる。
— まさか……
— あの腰抜け、怖くなって逃げたんじゃないだろうな?
そう言いながら、巨大な刀を持ち上げる。
そして――
ドォン!!
地面へ突き立てた。
軽い地震が町を揺らす。
僕は思わず飛び上がった。
— ちょ、ちょっと待って!
— そんなのを毎日持ち歩いてるの!?
すると“傲慢”は楽しそうに笑った。
— おや?
— 気になるのか?
— アハハハハハハハ!!
彼は刀を軽く叩く。
— これは私の『神器』だ!
そして、人差し指を立てた。
— 重さは……二百トン!!
— に、二百トン!?
思わず目を見開く。
— 絶対に嘘だ!
すると彼は胸を張った。
— 私は傲慢だ。
— だが、嘘つきではない。
そして刀をこちらへ差し出す。
— 信じないなら……
— 持ち上げてみろ。
⸻
僕は近づいた。
全力で引っ張る。
押す。
持ち上げる。
……
……
びくともしない。
一ミリたりとも。
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— うそでしょ……
僕はその場に尻もちをついた。
すると“傲慢”が腹を抱えて笑い出す。
— アハハハハハハ!!
⸻
キックが前へ出た。
— 神器ですからね。
僕は振り返る。
— 神器?
彼はポケットから小さな球体を取り出した。
— これが私の神器です。
それを見た“傲慢”が吹き出した。
— 球!?
— それを投げて戦うのか!?
キックは完全に無視した。
— 神器とは、特定の人物のために作られた特別な武器です。
彼は巨大な刀を見る。
— 七つの大罪は、全員が神器を持っていました。
そして、自分の球体を見せる。
— 一部の英雄たちも、同じようにね。
僕は瞬きをする。
— 王様も?
— ええ。
— じゃあルシアンは?
— 彼は持って――
⸻
— もちろん、持っている。
⸻
突然、声が割り込んだ。
全員が振り返る。
森の中から、二つの人影がゆっくりと姿を現した。
その瞬間――
とてつもない圧力が町を包み込む。
“傲慢”ですら、笑うのをやめた。
僕の羽が総毛立つ。
一人は――
ルシアン。
そして、その隣に立つ男。
黒い髪。
穏やかな瞳。
背には巨大な剣。
だが何より異様だったのは――
彼を包む気配。
まるで、一つの山がそこに立っているかのようだった。
⸻
“傲慢”が一歩後ずさる。
— お前……
その声は、わずかに震えていた。
— 私たちを倒した男……
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キックが目を見開く。
— まさか……
— 本当に見つけたんですね……
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ルシアンは笑みを浮かべた。
— 当たり前だ。
彼は腕を上げる。
すると光が集まり――
一振りの剣が、その手に現れた。
— しかも……
— 俺の神器まで鍛えてくれた。
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沈黙。
⸻
黒髪の男は、全員を見渡した。
そして穏やかに微笑む。
— やあ、みんな。
彼は背中の大剣に手を添えた。
— 俺の名前はテツヤ。
— 『雄牛の加護』を持つ者だ。
その視線が、まっすぐ僕へ向けられる。
そして、優しく笑った。
— そして君が……
— 俺の弟か。
— 『フェニックスの加護』を持つ者。
彼は手を差し出した。
— はじめまして、ツバサ。
⸻
第9章 ― まさかの来訪者!! 完




