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『』が全てを支配する  作者: 猫かぶった猫/冬の夕暮れ
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第五話 『』と闘争

前回は作者が気持ちよくなってただけなので今回は丁寧に書きたいと思ったらコレ。

クガラ⋯正直あの戦闘を見てから戦いたいとは思わなかった。いつかは戦うのがわかっていたが、もう少し、支配魔力(マギエナ)に慣れてからが良かった。

蒼炎とともに空を舞い、様々な技を扱う。あと半裸。そんあ人物と誰が模擬戦といえど、戦いたいと思うのだろうか。


カプセルに再度寝かされ、意識が開けるまでの間、相手への対策を講じる。




視界は開け、砂の感触が脚を伝わり脳に届く。

砂漠のようだ。今回もまた砂漠の一帯でひらけている。こうしてみていると先日の戦場を思い出す。

前回のように目の前に白刀が転送され、戦闘開始の合図が送られる。


今回は接敵まで少し余裕がありそうなので刀を振ってみることにした。軽く振るい、前回で完全に掴んだ支配魔力(マギエナ)の流れを知覚する。馴染んできた気がするが⋯どうしても異物感が拭えない。

自然に流れるまで時間がかかりそうだ⋯何事も慣れか


刀に集中していると、さくさくと砂を踏む音が近づいている。しっかりと砂を踏みしめながらゆらゆらと近づいてくる様は、まさに幽霊のようだった。


「見つけたぜ、夜一ィ」


特徴的な仮面を揺らしながら右手の大太刀を低く構えるクガラ。

対してこちらも居合の構えを取る。


「長い刀だな⋯大太刀っていうんだっけか」


その細長い指に握られた薄鈍の、妖しい殺意を孕んだ五尺刀に目を向ける。


「あァ、こいつの名前は哪吒(なだ)数珠丸(じゅずまる)、かっけぇだろ。オレは数珠丸って呼んでる」


「こいつの銘は⋯⋯なんだ?」


考えてみれば俺は手元の白刃の名を知らない。一度とはいえ共に戦った仲だ。刀相手でも知らないのは無礼というものだろう。


「迅先輩⋯こいつの銘を教えてもらったり⋯」


『今頃かよ⋯⋯【鏡雲(みらくも)】だ』


呆れたような電子声が空から落ちてくる。


()()は教えないのか?』『まだ早いだろ』


なんて会話がボソボソ聞こえてくるが、夜一はまだ理解していないし、聞こえてもいない。


「ところでお前、自分の支配能力(セグレト)は理解してんのか?」


「あぁ、暫定と憶測だけどな。多分、『(うごき)』だ」


『お前!わかってたのかよ!前回使ってないだろ!』


「予想っていってるじゃん⋯」


天のスピーカーの奥からクライニスが騒ぎ立てる。どうやら前回純粋な剣術で負けたのが悔しいらしい。と、言いつつもクライニスも使用していなかった気がするが⋯まぁ気付いたの途中からだからセーフ

そう心の中で補足を入れながらクガラの動きを観察する。

ゆらゆらと決まった重心のない構え。しかし筋肉までだらけているわけではなく、全神経に意識が集中され、いつでも反応出来る状態。


「オレの能力は使用制限というか、魔力とは別のモンが必要なんだよ」


少なくともあの攻撃がどんどん飛んでくるわけじゃないのか⋯と安堵したのを穿つように、新しい情報が呈される。


「それが、()()では使い放題なんでな、バンバン使わせてもらうぜ」


来る


そう予感したときにはクガラは柔らかい砂地から跳躍。その体躯は宙に浮き、刀は振りかぶられていた。


「ふっ!」


威勢のいい掛け声とともに大太刀が振り下ろされる。

それを受ける躱すでもなく突っ込む。大太刀の刃で鏡雲を削りながら、柄の部分に突進する。

クガラは余裕そうに柄を前に押し出し、その細長い腕からは想像できない膂力で俺を刀ごと弾く。


フィジカル強え!けどそれで倒れるほどヤワには育てられてないだよ!


再度、上段に構えられた刀を握りしめ、目線を相対する男に向ける。


本来の居合になぞらえて作られた、古くから伝わる上段からの断ち切りを、一部の東雲(しののめ)家と改良した技の型。推進力は得られないが、初速は白綴流(びゃっていりゅう)、【由楽刀(ゆらぎ)】にも比肩する速度で、汎用性の高い技である。その刀の最先端、切っ先の速度は常人には捉えられず、ゆうに秒速35mを超える。それを更に、支配魔力で加速させる。


「【(はく)げ──】」


その型の名を発し終わる前に、その黒瞳が目の前にある指輪のようなものを捉える。


数珠か⋯?それ如き今更────ッ!


突如、爆音が轟く。朱色の轟炎が大気を包み、両者諸共に爆ぜさせた。一瞬にして視界は赤色に染まり、脳が鋭い痛みを訴える。


爆発⋯!さっきの数珠みたいのが爆弾かよ⋯けどあいつも同じような距離で食らったはず⋯なら条件は同じだろう


その希望とも言える予想を裏切り、粉塵の中から現れたのは煙に薄汚れただけの無傷の姿だった。

下に構えられた刀が胴体を狙い、素早く跳ね上がる。それをなんとか反応しつつ回避し、体勢を立て直す。


「ちぇ、今のでやれたら良かったんだけどな〜」


口笛を吹きながら、大太刀をを器用にくるくると回すクガラ。その筋肉質な細身には傷一つ無く、着ている服にも燃えたあとも千切れたあとも残っていない。


「なんで傷一つないんですかね⋯」


再度の爆発を警戒しながらの文句には、すぐに返答が帰ってきた。


「知りたいか!なら教えてやる。俺はッ」


待ってましたと言わんばかりの勢いでポーズを決めるクガラ。


「不・死・鳥だァァァァァ!!」


「⋯⋯⋯⋯?」


「⋯⋯⋯⋯」


⋯⋯⋯なんと反応すればいいのだろうか

みるみるうちにクガラのテンションがジェットコースター並みに落下して行くのがわかる。そんな自慢なのか⋯不死鳥。いやすごいけど


「⋯反応しろよ」


無表情のまま──仮面で口元しか確認できないが──ずんずんと近づいてくる。


「おい」


また接近され、仮面の鼻が俺の額をつつく。


「おいってば」


また一歩近づいてくる。

俺は一歩下がる。また一歩踏み込んできた。今度は二歩下がってみた。するとただでさえ長い脚を大股で、三歩詰め寄ってきたので、俺は一歩後退し、腹に前蹴りをしてみた。

不意をつくようなタイミングだったのでおそらく反応しきれず、頭から砂漠にベッドインする。


「うおおおおおおおおおおおおい!」


「戦いに流儀はないッ!勝機!」


その煽るような激しい言葉とは裏腹に静かに刀を鞘に納め、内部に魔力を溜める。


「【白爪彈(しらはじき)】」


「うおっ」


一瞬にして蓄積させた魔力を爆発させ、生んだ推進力に身を乗せ、起き上がったクガラへ追撃をかける。

【白爪彈】は”斬る”より、”叩く”や”押し込む”といった打撃系の型である。

そのため、クガラの長身は刀に弾かれ後方へと再度倒れ込む。今回はすぐに起き上がり、こちらを睨むその仮面は少し割れている。


「⋯割ったな」


するとさっきまでの茶化すような怒りとは違う、殺意を帯びた熱視線で、苛立ったような声で、いや実際には苛立っているのだろう。明確な敵意を向け、睨みつけてくる。


なにに?仮面が割れたことにか?なんか特別なものとかか⋯


と、謝罪の言葉を探していると、クガラは戦闘で荒れてきた砂漠に、薄鈍の長刀を突き立てる。


「もう、試験とか関係ねえ。殺してやる」


その細長い体躯からは殺意と魔力が渦巻き、天を呑まんと立ち昇る。一方手に握る妖刀からもなにかが漏れ、砂との接地面からは黒い焔のようなものが滲み出ている。パリパリと音を立て、黒い雷閃も迸る。


『まずった⋯!クガラ!これは試験だ、おちt──』


ブツッと迅たちの声が消失する。

そもそも試験とかは初耳なんだが?模擬戦て伝えられたネ⋯んなことはどうでもいい。今は対処が最優先だ⋯!迅があそこまで慌てるってことはなんかあるんだろ

と、クガラの方は何やら独り言(詠唱)──らしきもの──を終えたらしく、放出する力を更に増す


『──(にじ)混沌(こんとん) (あふ)秩序(ちつじょ) 背反一体(はいはんいったい)(つい)()せ (くら)(あそ)びは蕩尽(とうじん)なりて、(おか)せ 【夜戯(よあそび)苦樂之荼枳尼天(くらのだきにてん)】』


そう、おそらく技の名であろう言を言い終えると、先程までの暗黒(くろ)い力の憤激は、徐々に形作られていく。骨の形成から始まり、骸骨に肉体がまとわりつき、色を無くしてゆく。それは、まるで闇黒孔(ブラックホール)のようで、禍々しい敵意にみちみちている。


あの仮面⋯⋯まさかもしや大事なもの壊した感じか⋯!?そうとなれば謝罪をばっ!?


謝ろうと土下座の構えを取ろうと下げた頭の上を力の黒塊が過ぎ去ってゆく。そのまま背後へとゆるやかな稜線を描きながら、砂漠に着弾する。ゆるやかにといってもものすごい速度なわけで、着弾した場所からは砂塵がこれでもかと空に踊りだす。ここ最近戦闘中に砂塵を見かけることが多いな、と呆けているとクガラからまたも殺意が溢れ噴き出す。正直怖い。


「ちょっ!まっ!待てよぉぉぉぉ」


叫びながら先程の黒塊の発射主──形作られた、先程の詠唱を聞くと名前は【荼枳尼天】と呼ぶのだろうか。そんな人の形をした闇黒孔を見据える。こりゃまずい。


元はと言えば、不慮の事故とはいえ、俺が引き起こしてしまった憤怒の激情だ。それならば、せめて足掻くくらいはしてみよう。そう心の中で意思を決定し、再び、白刀──鏡雲(みらくも)を鞘に納め、もう慣れた体勢で、目を見開き、支配魔力を巡り廻す。不思議と今は、異物感がない。




いざゆかん、最速へと

届かずとも至る、自由へと───


第二作決めかねてる

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