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『』が全てを支配する  作者: 猫かぶった猫/冬の夕暮れ
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第三話 『』と戦争

トマトの旬って3月から初夏にかけてらしいよ。しかも甘みと栄養が凝縮されるからすごい美味しいらしい。つまりあの小説も内容が詰まっていて面白みが溢れていると⋯⋯!期待期待

「韋駄天?」


「面倒くさい奴が⋯」


砂煙をかき分け、目測2mはあろう巨躯を震わし、暴虐に嗤う。


「そいつはヴァリアート(うち)に必要だ。ボスの命令もある、寄越せ」


「やだね、ウチの数少ないメンバーだ」


お互い負けじと引かぬ目線(殺意)の応酬。

数秒の視戦の後、ボンと、砂が爆ぜたかのように再び宙に舞う。睨み合いの静寂を破り、筋肉の盛り上がる巨体で前傾姿勢をとり、猛烈な勢いで突進(タックル)してくる。狙いは明らかに迅だけであった。

その足の生えたダンプカーの如き巨突をひょいと軽い動作で躱してみせる。どころかそのまま無防備(ノーガード)の横腹をコンパクトに蹴る。

しかし、その厚い肉の壁に阻まれ衝撃は体内で吸収される。


「ハハッきかねぇな」


「じゃあその汚ねぇ舌でも噛みちぎってろ」


男が振り向いたと同時に顎下からの脚の急襲。男がよろめいた隙にこちらへと駆け寄り、睨む男のプロフィールを公開していく。


荒剛(こうごう)(りく)支配能力(セグレト)は見てくれの通り⋯」


「自己紹介くらい自分でできるわ!」


荒剛と呼ばれたその男が立ち直り、意趣返しのようにその太い脚を振り上げる。見た目より素早い動き。それを一歩下がり首をずらす。その足は鼻先を捉えただけで、狙いであろう顎には触れもしなかった。


「⋯⋯!」


「迅さん⋯!」


掠っただけであろう鼻から、血が垂れる。違和感に鼻を押さえるが血は止まる様子はない。


「ハッハッハァ!当たってンじゃねぇの!」


「馬鹿力がァ⋯!」


血以外に異変は無いようですぐさま構えをとる。しかし互いに動きを止め、身体に力を入れなんらかの異変を起こす。


「【変速(スペンデル) 4th(フォース)】」


体表に瞬く電光が駆け巡る。その電光は速度のみを追求する疑似の雷電である。


「【筋肉装甲(きんにくそうこう)】」


体表を赤い筋繊維が駆け上り、覆っていく。その繊維は力のみを追求する暴力の象徴である。


電光が疾り、まだ筋繊維が覆いきれていない露出部めがけて鋭い蹴突を放つ。

それを同じく脚で防ぐ。どんだけ脚好きなんだよ。


英雄(ヒーロー)の変身シーンに邪魔入れるもんじゃねぇぜ?」


悪役(ヴィラン)の間違いだろ」


変則的な鍔迫り合いの後、やはりというか筋肉を纏う太脚が突き出され迅の体躯は弾かれ、丁度俺の真横に来る形となる。


「⋯迅さん、あんたの支配能力、『速度』だな?」


荒剛にきかれぬよう、蚊の鳴くような声で囁きかける。


「!支配能力のことを⋯そうだが?」


「俺が荒剛の隙を作る。その間に可能な限り、最大まで加速してあいつに攻撃をぶち込んでくれ」


「!?わかってるのか、お前は死なせたらダメなんだ。こっちの都合で悪いが、待っててくれ」


驚きを隠せない様子で制止される。そりゃそうだ。掠っただけで鼻血の出る蹴りなんて普段なら帰宅(ゴーバック)してる。だがこの世界に来た以上、戦闘には慣れておきたい。


「俺はこの世界で、生きると決めたんだ」


「⋯⋯ん〜⋯二分だ。二分で戻って来る。策はあるんだろうな?耐えてくれ」


充分に熟考し、そう言い残し凄まじい速度で後方へと走り去っていく。

おそらく迅の速度が速いのは動き始め、つまり初速だけだ。それに対して荒剛(ヴィラン)は支配能力による筋肉の増強で継続的に馬鹿力を出し続けられる。今の速度で見切られるのならジリ貧で負けるだろう。


「話は終わったのか?」


それなら、烏合よりも特出。


「あぁ、利口に待ってくれてありがとな」


「ハッ次はお前か⋯がっかりさせてくれるなよ」


最大火力で沈ませてやる。


「来いよ」


ちょいちょいと煽ってみたはいいものの、あの攻撃に耐えれる気がしない。筋肉といううものは必ずしも多ければいいというものではない。凝縮したならその分追加があるわけだ。しかし、目前の3mを越すであろうその巨体を覆う赤い糸は男の余りある膂力を大きく誇示している。

その時、荒剛が筋肉筋肉を振るい、仁王像のような姿で突進してくる。右腕は腕に埋まっているのか手元がよく見えない。


「【蓄放筋砲(ちくほうきんほう)】ッ!」


瞬間、埋没していた部分が突き出され、恐ろしく速い手刀が飛んでくる。ほぼ勘で右に顔をずらすと、左の髪と耳にジリッとした感触が残り、熱くなる。


あっぶねぇぇ〜山勘で当たったから良かったけど今の喰らったら死んでたよな⋯


「フン、今のは避けれるみてぇだが、まだ序の「【朱雀爪(オニキス)】!」ぐびべっ」


空から何かが落下し、爪を立て叫ぶ。

荒剛は怒ったように顔を赤くし──既に赤かった(筋肉のせい)──参戦者を睨みつける。


「終わったから来てみたら迅いねぇじゃねぇか!ん、なんかすることあるか」


顔半分は隠している鼻部がキノピオのように尖っている木面を付けている。胴体には腹胸筋をあらわにし、半纏を羽織っている。ほぼ半裸である身体から蒼炎を揺らめかせ、荒剛に向き直る。


「迅が加速中、相手の足止めを。あと相手を凍えさせたりできますか?」


「んァ?できるが」


「それなら⋯」


俺の作戦を口頭で伝える


「⋯!とりあえず戦闘だな!承ったァ!」


傍らに置かれる大太刀と分類されるであろう薄鈍色の鞘なしの刀を妖しく滑らかせ、詠唱を開始する。この世界に来て、初めての詠唱。


『凍てさざれ冰れ【夜遊(よあそび)悲寒罵波(ひがんばな)】』


鈍く光る刀身から前方へと薄白の雲煙が噴射される。雲煙は地を這いずり、荒剛の足元でまるで意思でもあるかのように留まり、渦巻く。


「なんだァ?こいつは」


渦巻く薄雲を全身に浴びながらも謎の参戦者に鋭い連続突きを放つ。その半裸は攻撃の猛攻をゆらゆらと、陽炎のようにすり抜けていく。


「てかよ⋯お前、【ニードバーン】だろ」


「⋯死ね!」


この激しい攻防の中、舌を噛み切らずよく喋れるな⋯参戦半裸さんに関しては跳び回ってるし

しかし、攻防が繰り返されるだけで、有効打は生まれない。


そのほぼ互角とも言える戦況が、傾く。


荒剛を踏み台に上に大きく跳ぶ。

踏み台はその影を追うため、仰け反る。無理な攻撃姿勢に完全に防御をせず、構えるだけ。その意表を突く。


「【夜遊(よあそび)沈魂狩忌劇(ちんこんかきげき)】」


大太刀とはいえ、明らかに届かぬ距離。しかし乱入者は構わず虚空を切り裂く。

この支配能力(ちから)は現実を歪ませる。


飛ぶ斬撃。


濃く深い銀の刃が、荒剛の身体に食い込み、紅い装甲を断ち切る。


「ッ!無詠唱で⋯これか!完全(フル)詠唱(えいしょう)だとどうなんだァ!?おい」


筋肉が切れているのにも関わらず、大口を開け嗤う。


「ハッハッハ迅なぞ待たずに殺してやらァ!」


両者のテンション(ギア)が一段階上がる。


再び連撃の攻防になるが、今回は長く続かなかった。背中を向け、回避からの空中にいる僅かな時間を狙い、荒剛が右腕を突き放つ。が、それを縦に構える大太刀で受け止める。


「【夜遊・悲寒罵波】」


男の大太刀の腹に止められた拳は、再び刀身が吐く白い冷気によって冷却される。荒剛は舌打ちながら、再び男に拳を振りかぶる。しかし、


「!?うごけな──」


「特急電車だ!」


遼遠で輝く一筋の白雷。周囲を散らしながら猛然と飛来するまさに閃光。数秒にも満たない時間の刹那、三者は世界最速を観測()た。


無際加速(アクセレラシオン)


一歩ごとの速度を際限無しに底上げし、男が纏う疑似雷は、さらなる加速を見せる。


「【臨界越速(ブラディオン)】」


粒子の名を冠するその速度は光には達せずしかし、新世界を魅せる。


「死ね⋯!【点描(アグドーダ)】!!」


飛び蹴りの体勢で迫る世界最速は吸い込まれるように荒剛の胸を貫く。荒剛は声を発す間もなく、筋繊維は千切れ、巨躯は吹き飛ばされる。周囲は最速により砂が巻き上げ、砂地がクレーターがのようにへこむ。

荒剛は倒壊したビルに叩きつけられ、うなだれる。


「はぁっはぁっはは、よくやってくれた二人とも」


息を切らしながらも笑顔を見せる迅。先の速度で傷ついたのか肌や服には血が滲んでいる。


「クガラ、どうやってあの筋肉バカを止めた」


「キヤマヨルイチのおかげでな、感謝」


俺はクガラに伝えた作戦を説明する。てかクガラっていうんだこの人


「冷気による筋肉の縮小を利用した。猛運動後の急速な冷却で筋肉は収縮し、可動域が狭くなる。それを無理やり動かしたら、まぁ動かなくなるよ」


「⋯かっけぇぜ、クールだ」


人体の構造については叩き込まれてきたからな〜役に立つ日が来るとは


そのとき、背後で瓦礫が吹き飛び、倒れたはずの荒剛がギラついた目を光らせる。


「⋯ァ【過圧筋装】!」


「まだ生きてんのかよ!しつけぇな!」


各位が戦闘態勢に入るが、荒剛の背後から誰かが巨大な何かが現れる。


「帰宅時間だ、陸」


フードを目深に被り、全身も同様に隠している。木のナメクジのような生物?に乗っている。


「やるぜ」


クガラが携える大太刀を構え直す、が


「【深緑林の進槍(トレガッドル)】これ以上進むなよ」


この枯れ果てた風景とは程遠い樹木の根が地面から勢いよく伸びる。


「【緑林の縛蔓罠(ヴィズルファンガ)】」


再度地面より木の根が生えてきて、荒剛の身体を締め付ける。しかし今回の根は先程の太いものではなく、何重にも絡まった蔓のような植物である。


「なんのつもりだ⋯圭」


「ボスからの命令だ、『直ちに帰還しろ』って」


先程までの威勢は怯えるように鎮まり、無言になる。


「お前らも、次はない」


そう言い残すと、木の根に包まり砂の埋め尽くす大地の中に潜っていく。


「なんだったんだ」


緊張が解けたようで、二人とも座り込む。


「あぁ゛〜つ゛がれだ〜」


ほんとに疲れたようで、近くの瓦礫に寝っ転がる。そりゃそうだ、あのゴリラの戦闘に張り付き、あんな速度を出したら、それこそ骨が折れるというものだ。

そこまで考えふと現実に帰る。


俺はこの後どうなるのだろう


今のうちに逃げられねぇかな。いや無理だな、あの速度の前には勝てん。


そう諦めたところで迎えが来たようで、その鉄の機体の中に放り込まれシートベルト(拘束具)を付けられる。


うぉぉぉぉぉ誰か助けてぇ〜


その叫びは、夕日の深くへと沈み込んでいった──

目録の方に詰め込むわ。今回目録見ないと理解できんかも、ごめん。

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