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中世異世界で企業する  作者: 紅茶


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③自立への焦り5

【第四の実験:実施検査】


ベースパウダーを使って見事に煤と油を落とした布を鼻に近づけた瞬間、私は思わず顔をしかめた。


布には、スラムの川辺で採れた粘土の生臭い土の匂いと、暖炉の灰の焦げ臭さ、そして何より、布自体に染み付いていた工場の機械油と下水の悪臭が、複雑に混ざり合って残留していたのだ。


「これじゃ駄目だわ……。ターゲットは富裕層の館。どんなに汚れが落ちても、スラムの臭いがする粉なんて、絶対にメイドたちは買ってくれない」


私は集めておいたハーブの葉を石ですり潰し、パウダーに混ぜ込んでみた。


しかし、生の葉を潰しただけでは青臭い汁が出るだけで、乾燥させて混ぜても香りが弱すぎた。悪臭を上書きするには、植物の精油エッセンシャルオイル成分を極限まで引き出す必要がある。


だが、このスラムに精油を抽出するような蒸留器などあるはずもない。



【第五の実験:香りの定着】


私は壁に寄りかかり、小さな頭をフル回転させた。


(蒸留器がないなら、物理的に香りの分子を粘土の多孔質に定着させるしかない。熱だわ)


私は暖炉の火が落ちた深夜、親が寝静まったのを確認してから、鉄のフライパンをこっそり持ち出した。


フライパンにベースパウダーを敷き、その上に細かく刻んだ乾燥ハーブを乗せる。


そして、ごく弱火の余熱でゆっくりと乾煎りをした。熱を加えることでハーブの細胞壁を壊し、揮発し始めた香りの精油成分を、下にあるフラー土(粘土)の微細な穴の中に直接吸着・閉じ込めるという強引な手法だ。


煙が出ないよう、焦げないよう、私は三歳の腕で重い木べらを必死に動かし続けた。


熱気と疲労で意識が飛びそうになる中、数時間が経過した頃、ついにフライパンから、土の臭いでも青臭さでもない、ミントとラベンダーが混ざったような、目が覚めるほど清涼な香りが立ち上り始めた。


「……できた」


翌日の昼間。


私は物置小屋で、最後のテストを行った。

実験台は、父アーサーが長年着古し、もはや元の色が何色だったのかも分からないほど煤と油で黒光りしている最悪の作業着の切れ端だ。

私は完成した灰褐色のパウダーをたっぷりと振りかけ、小さな手でしっかりと揉み込んだ。灰が油を分解し、粘土が汚れと悪臭を吸着する時間を計算し、しばらく放置する。


そして、硬い豚毛のブラシを使って、粉を一気に払い落とした。


バサッ、バサッ。


黒く変色した粉が、まるで暗い雪のように床に落ちていく。

粉を完全に払い落とした後、私は息を呑んだ。


そこには、煤も油も完全に消え去り、生地の柔らかな手触りを取り戻した布があった。鼻を近づけると、あの吐き気を催すスラムの悪臭は跡形もなく消え去り、代わりに富裕層の館の庭園を思わせるような、上品で清涼なハーブの香りがふわりと漂ってきた。


「……大成功だわ」


私は泥と煤、そして自分の血で真っ黒に汚れた小さな両手で、完成した「水を使わない清浄粉」の入った木の実の殻を高く掲げた。

この時代の常識を完全に覆す、完璧なイノベーション。


これを見せれば、水洗いできない高級な絨毯やベルベットのカーテンを汚染から守りたいと切望している富裕層のメイドたちは、いくらでも金を払って飛びついてくるに違いない。

この数十グラムの粉は、私が親という未来の搾取者から逃れ、一人でこの世界を生き抜くための、最強の「独立資金」となる。


「見ていなさい。私を労働力として計算しているあの親たちを出し抜いて、私一人でこの都市の富を吸い上げてやる」


物置小屋の薄暗い陰の中で、三歳の少女の顔に浮かんだのは、子供らしい無邪気さとは無縁の、冷徹で野心に満ちた資本家の笑みだった。


私は親に一切頼ることなく、自らの血の滲むような努力で、最初のビジネスの種を完全な形に仕上げた。


あとはこれを、いかにして富裕層の懐にねじ込むかだ。私の孤独な生存戦略は、ついに机上の空論から、現実社会での実践フェーズへと移行しようとしていた。


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