③自立への焦り4
【第一の実験:水分量】
まずは拾ってきた平らな石をすり鉢代わりにし、粘土を砕いて灰と混ぜ合わせた。比率は半々。それにちぎったハーブを混ぜ込み、物置小屋に落ちていた、機械油と煤で真っ黒に汚れたボロ布に擦り込んでみた。
結果は惨憺たるものだった。
川辺で採ってきたばかりの粘土は湿気を帯びており、布に擦り込んだ途端に油と灰と混ざり合って、ただの「黒い泥のペースト」へと変貌してしまったのだ。布の繊維に泥がべっとりと入り込み、元よりもひどく汚れてしまった。
「……当然ね。水分が残っていれば、多孔質の隙間が水で埋まってしまい、油を吸着できない」
私は三歳の細い腕を痛めながら、失敗した泥のペーストを削り落とし、深く溜息をついた。物理的な体力のなさがもどかしい。だが、泣き言を言っている暇はない。私はすぐに粘土を薄く広げ、日当たりの良い屋根の上と、夜間の暖炉のそばを利用して、数日かけて完全に水分を飛ばす工程を追加した。
【第二の実験:化学反応】
数日後、カチカチに乾燥した粘土を、石で何度も叩いて細かいパウダー状に砕いた。手のひらにはいくつも水ぶくれができ、それが潰れて血が出たが、私は構わず作業を続けた。
サラサラになった粘土パウダーに、再び同量の灰を混ぜ合わせる。今度は泥にはならなかった。粉はボロ布の油分を見事に吸い取り、豚毛のブラシで払い落とすと、黒い汚れが粉と一緒にボロボロと落ちていった。
「よし、油は抜けたわ。でも……」
払い落とした後の布地を見て、私は舌打ちをした。布の表面がひどく毛羽立ち、色も変色してボロボロになっていたのだ。
「灰が強すぎる。汚れの分解には効果的だけど、濃度が高すぎると天然繊維のタンパク質を化学的に破壊してしまうのね」
前世の化学式が頭の中を駆け巡る。貴族が着るような高級なシルクやベルベットにこんなものを使えば、一発で賠償問題になり、私は牢屋行きだ。灰の配合量は、極限まで減らさなければならない。
【第三の実験:配合量】
そこからの数日間は、地獄のような微調整の連続だった。
粘土9に対して灰1。
粘土9.5に対して灰0.5。
少しずつ灰の量を減らしながら、布が傷まず、かつ油汚れが限界まで落ちる「黄金比」を探り続けた。幼児の身体はすぐに疲労で悲鳴を上げ、夜になると熱を出して寝込むこともあった。
母メアリーが心配して私の手を握り、「どうしてこんなに手が荒れているの」と泣きそうになっていたが、私は「外で転んだの」と冷たく嘘をついて背を向けた。親に同情されて計画を邪魔されるわけにはいかないのだ。
数十回のテストの末、ついに『粘土92%、灰8%』という、繊維を傷つけずに油分を極限まで分解・吸着する完璧なベースパウダーの比率を導き出した。
汚れは完璧に落ちる。しかし、新たな、そして決定的な問題が立ち塞がった。




