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姉と妹 その2

 通話を終えて、スマホをテーブルに置いた。


 志保さんとの話はうまくいった。あとは姫川ユリナの配信スケジュールを確認して、タイミングを伝えるだけだ。


 そう思いながら、その日は眠った。


 翌日の昼時、タイミングの良いことに、霧島さんから連絡が来た。



 ―――――――――――――――――――――


 先日はすみませんでした。


 あんまり良くない別れ方でした。


 ちょっとだけ、事情を話させてください。


 ―――――――――――――――――――――



 そんな内容だった。


 返事をすると、少し経って、通話の音が鳴った。

 迷わず、通話のボタンを押す。


「あ、一ノ瀬さん。すいません、聞こえますか」


「はい、聞こえてます」


「先日はすいませんでした。せっかく一緒に遊びに行ったのに、いい別れ方じゃなかったなと思いまして」


「いえ、こちらこそ。ご家族のことなのに、深入りしすぎてしまったかもしれないです」


 絶賛深入り中なのに、よくこんな嘘がつけるものだ。自分で自分をどうかと思う。


「……」


「ちょっとだけ、姉のことを話してもいいですか」


「はい、どうぞ」


 霧島さんが、小さく息を吸う音がした。


「姉と喧嘩したのは、もう半年くらい前になるんですよ。私がちょっと言いすぎてしまって。ちょうどその頃、私があんまり余裕がない時期で。そのまま引っ越しして、今日まで疎遠のままなんです」


「……そうだったんですね」


 姉の志保さんから聞いた内容と同じだった。

 それでも、初めて聞いたかように返答する。


「実は喧嘩の後も、姉は何度かメッセージを送ってきてくれてるんですけど、私、返信するのが怖くて。ずっと未読のままで放置しちゃってて」


 ブロックしているわけではなかったらしい。ただ、返事を返せないでいる。


「怖い、というのは」


「謝っても、もう遅いかもって思って。けっこう酷いこと言っちゃって、許してもらえないかもしれない。それから、メッセージを見るのが怖くなっちゃって」


 一度話し出すと、堰を切ったかのように止まらない。


「昔からなんです、私。臆病で、意地っ張りで、素直じゃなくて。学生の時から、姉にずっと甘えてきて、たくさん感謝しているのに、それを伝えられなくて。昔からなにかと反発してばっかりで。そんな私が、今さら姉に許してもらえる資格なんてないんです」


 徐々に声のボリュームが小さくなる。


 俺は黙って聞いていた。


「遅くないと思いますよ」


 それだけ、伝えた。


 いくら兄妹、姉妹でも喧嘩することもある。気に食わないこともいくらでもあるし、腹が立つことなんてしょっちゅうだ。

 だけど、それでも、幼い時から一緒に過ごした姉妹だ。仲直りするのに遅いも早いもない。お互いが許せるタイミングで、許したらいいだけだ。


「……そうですかね」


「お姉さんじゃないので、本当のところはわからないですけど。メッセージを送り続けているってことは、仲直りをしたくて、返事を待っているってことじゃないかなって」


 霧島さんは何も言わなかった。





「あの」


「……はい」


「枠立てている今日の配信、絶対してください」


「……え、なんでですか」


「お願いします」


「いや、お願いされなくても配信はしますけど……」


 困惑した声。説明しすぎないように、気を付ける。




「あと、良かったらカラオケでも行きませんか。明日」


「えっと、明日ですか」


「はい。歌を教えてほしいという話だったので、自分が知っていることを教えようかと」


「……唐突ですね」


 面を食らったかのような、そんな雰囲気だった。


「まあ、あの、いいですよ。近いうちに歌ってみた収録があるので。収録前に、是非ともお願いしたいくらいでした」


 良かった。唐突にもほどがある話だったが、承諾してくれた。


 これでいい。準備はできた。

 あとは、お姉さんに連絡するだけだ。

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