決勝って、マジ?
「取、引…?」
「そ、取引」
ヘラっと笑いながら、その人が一歩前に出る。
「九尾…って言えばわかる?」
「なっ……」
首を傾げる私の隣で、ルーゼが絶句する。
九尾って何?
「あー…世間知らずかよ」
その人が、私を見てふはっと吹き出す。
「えーとな、つまり、時間軸破壊組織だよ。通称九尾ってカンジ?別に私らが九尾って名乗ってるわけじゃないんだけど…」
そう言うその人を睨みながら、ルーゼが私を庇うように立つ。
「……お断りだ。第一、なんでリンネを巻き込むんだ。他を当たれ。」
そう言ったルーゼに、その人は一瞬キョトンとすると、
「あっははははは!こりゃ傑作だなぁ!他を当たれって…ふっくく…」
ひとしきり笑った後、涙を拭いながらこっちへ向き直る。
そしてそのまま私の目の前へ、目にも止まらぬ速さで移動すると。
「この子が、六道を巡った者だからさ。」
ルーゼが私を庇うように広げていた腕を掻い潜って、私を抱き上げた。
「お、前ーーっ!!!」
逆上して飛びかかったルーゼをヒラリとかわし、こちらへ笑いかけてくる。
「…で、取引、する?」
そんなの……
「こっちの利を聞いてないんだけど?」
ジト〜っと睨む。
「あっ、そだそだ。忘れったわ〜。私たちと世界を壊してくれたら……」
耳元に顔を近づけられ
「元の世界に、戻してあげる。」
そう、囁かれた。
元の、世界……?帰してくれるの?
「早く…!リンネを返せ‼︎」
ふと、そう叫ぶルーゼの声が耳朶を打った。
………取引…
「お断り、かなぁ…」
そう呟いた私に、興味深そうな目を向けるその人。
「へぇ、なんで?」
そんなの、答えはわかりきっているのに。
「僕、この世界好きだからさ。大切な人だっているし…」
そう言って、ルーゼを見やる。メアリーや全能さんのことが頭をよぎった。
「好きだから、壊したくない。だから、取引しない。」
「そうか…じゃ、今回は諦めっか!」
そう言って、ヒョイっと私を下ろすその人。
「リンネに、金輪際、手を出すな。」
「はいはい、わかったよ」
番犬の如く唸るルーゼに苦笑いし、
「じゃあな」
来た時と同じように、天井の穴から飛び去っていった。




