↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祐兵さんと豊久くん ――日向の空の下で――  作者: Gさん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
323/359

第三百二十話 夕涼みの縁側

祐兵さんと豊久くん 登場人物紹介


祐兵(すけたか)さん…伊東祐兵《いとうすけたか》。紆余曲折を経て、飫肥藩初代藩主になった。知略に優れ、学問を愛する。

豊久(とよひさ)くん…島津豊久《しまづとよひさ》。島津氏家臣で、島津家久《しまづいえひさ》の息子。武芸一筋で、まっすぐな心を持つ。

小春(こはる)と黒猫…二人の飼い猫

夏の夕暮れ。


日が西へ傾き


昼間の暑さが少しずつ和らいでいた。


館の庭では


蝉の声が遠く響いている。


伊東祐兵《いとう すけたか》と島津豊久《しまづ とよひさ》は


縁側に腰を下ろし


庭を眺めながら夕涼みをしていた。


「昼間に比べると、ずいぶん涼しくなりましたな」


豊久《とよひさ》が団扇をゆっくりと動かす。


「ああ」


祐兵《すけたか》も団扇を手にしている。


「日が沈めば、さらに過ごしやすくなるだろう」


二人の前には


湯を入れた麦湯が置かれていた。


湯気はほとんど立たず


ほのかな麦の香りが漂っている。


豊久《とよひさ》は器を手に取り


一口飲んだ。


「こうして静かに過ごすのも、良いものですな」


「ああ」


祐兵《すけたか》は庭の木々へ目を向けた。


「昼は暑くとも、夕方には風が変わる」


庭の木々が風に揺れ


葉擦れの音が聞こえてくる。


その時


「にゃあ」


庭から鳴き声がした。


小春《こはる》が縁側へやって来た。


その後ろから


黒猫もゆっくりと歩いてくる。


「小春《こはる》殿も夕涼みですか」


豊久《とよひさ》が声を掛ける。


小春《こはる》は縁側へ上がると


豊久《とよひさ》の隣へ座った。


「今日はずいぶん大人しいですな」


豊久《とよひさ》が頭を撫でる。


小春《こはる》は気持ちよさそうに喉を鳴らした。


黒猫は少し離れた場所で丸くなり


庭を眺めている。


やがて空が


淡い茜色に染まっていく。


鳥たちがねぐらへ戻り


城下町からは夕餉の支度をする音が聞こえてきた。


「町も一日の終わりを迎えていますな」


豊久《とよひさ》が呟く。


「ああ」


祐兵《すけたか》は静かに答えた。


「今日も大きな騒ぎはなかった」


「それが何よりです」


豊久《とよひさ》は笑った。


祐兵《すけたか》も穏やかに微笑む。


しばらくすると


風が少し強くなった。


庭の木々がざわめき


涼しい風が二人の間を通り抜ける。


「これは心地よい」


豊久《とよひさ》が目を細める。


「ああ」


祐兵《すけたか》も頷いた。


「夏は暑さばかりに目が行くが、こうした涼しさもまた夏の楽しみだ」


小春《こはる》が「にゃあ」と鳴く。


「小春殿も同じ気持ちでしょうな」


豊久《とよひさ》が笑う。


やがて夕暮れは深まり


空には一番星が現れた。


二人は言葉少なに


その星を眺めていた。


戦や鍛錬から離れた


穏やかな夕暮れ。


祐兵《すけたか》と豊久《とよひさ》


小春《こはる》と黒猫は


涼しい風に包まれながら


静かな夏の夜を迎えるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。