↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祐兵さんと豊久くん ――日向の空の下で――  作者: Gさん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
319/360

第三百十六話 朝露の道

祐兵さんと豊久くん 登場人物紹介


祐兵(すけたか)さん…伊東祐兵《いとうすけたか》。紆余曲折を経て、飫肥藩初代藩主になった。知略に優れ、学問を愛する。

豊久(とよひさ)くん…島津豊久《しまづとよひさ》。島津氏家臣で、島津家久《しまづいえひさ》の息子。武芸一筋で、まっすぐな心を持つ。

小春(こはる)と黒猫…二人の飼い猫

夏の朝。


東の空が白み始め


館の庭には朝露が残っていた。


伊東祐兵《いとう すけたか》と島津豊久《しまづ とよひさ》は


朝の涼しい風に誘われるように


館を出て歩き始めた。


「今朝は涼しいですな」


豊久《とよひさ》が空を見上げる。


「ああ。昼になる前に、少し歩いておくとしよう」


祐兵《すけたか》は穏やかに答えた。


二人は城下町へ続く道を


ゆっくりと歩いていく。


まだ朝早いこともあり


町は静かだった。


軒先では朝餉の支度をする者の姿があり


井戸の周りでは水を汲む音が聞こえる。


道端の草には露が光り


朝日に照らされて小さな玉のように輝いていた。


「昨日植えた桔梗も、このような朝を迎えているのでしょうな」


豊久《とよひさ》が振り返る。


「ああ」


祐兵《すけたか》も館の方へ目を向ける。


「しっかり根を張ってくれるとよいな」


二人はしばらく歩き


川沿いの道へ出た。


朝の川は穏やかに流れ


水面には薄紅色の空が映っている。


「川の音を聞いていると、心が落ち着きますな」


豊久《とよひさ》が足を止めた。


「静かな朝だからこそ、よく聞こえるのだろう」


祐兵《すけたか》が答える。


その時。


「にゃあ」


後ろから聞き慣れた声がした。


振り返ると


小春《こはる》が二人の後を追って歩いてきていた。


「小春《こはる》殿も散歩ですか」


豊久《とよひさ》がしゃがみ込む。


小春《こはる》は豊久《とよひさ》の足元まで来ると


尻尾を立てて二人の間を歩き始めた。


少し遅れて


黒猫も姿を現す。


「今日も二匹一緒だな」


祐兵《すけたか》が微笑む。


四人は川沿いの道を進んだ。


やがて朝日が山の端から顔を出し


町並みを柔らかな光で照らし始める。


店を開ける音。


鳥の鳴き声。


川のせせらぎ。


少しずつ目を覚ましていく城下町の音が


静かな朝に重なっていった。


「一日の始まりという感じがしますな」


豊久《とよひさ》が笑う。


「ああ」


祐兵《すけたか》も頷いた。


「今日も穏やかな一日になりそうだ」


小春《こはる》が「にゃあ」と鳴いた。


まるでその言葉に賛同するようだった。


二人と二匹は


朝露の残る道をゆっくりと歩いていく。


やがて町にも人々の声が増え始める。


新しい一日が


静かに始まろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。