↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祐兵さんと豊久くん ――日向の空の下で――  作者: Gさん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
301/361

第二百九十八話 夏川のヤマメ釣り

祐兵さんと豊久くん 登場人物紹介


祐兵(すけたか)さん…伊東祐兵《いとうすけたか》。紆余曲折を経て、飫肥藩初代藩主になった。知略に優れ、学問を愛する。

豊久(とよひさ)くん…島津豊久《しまづとよひさ》。島津氏家臣で、島津家久《しまづいえひさ》の息子。武芸一筋で、まっすぐな心を持つ。

小春(こはる)と黒猫…二人の飼い猫

翌朝。


夏の陽射しが山々を照らし


澄んだ青空が広がっていた。


伊東祐兵《いとう すけたか》と島津豊久《しまづ とよひさ》は


城下近くを流れる渓流へと足を運んでいた。


「今日はヤマメ釣りですな」


豊久(とよひさ)は竹竿を肩に担ぎ


嬉しそうに川を眺める。


「ああ」


祐兵(すけたか)は穏やかに頷いた。


「この時季の渓流は涼しく、ヤマメもよく姿を見せる」


川の水は透き通り


川底の小石まではっきりと見える。


せせらぎの音が心地よく響き


木々の間を吹く風が暑さを和らげていた。


「良い場所ですな」


豊久(とよひさ)は目を輝かせる。


「焦らず静かに糸を垂らすことが肝心だ」


祐兵(すけたか)は餌を付け


静かに仕掛けを流れへ落とした。


豊久(とよひさ)もその隣で竿を出す。


二人は流れを見つめながら


静かに時を過ごした。


しばらくすると。


「……来ました」


豊久(とよひさ)の竿先が小さく震えた。


「慌てるな」


祐兵(すけたか)が声を掛ける。


豊久(とよひさ)はゆっくりと竿を立てる。


水面がきらりと光り


一匹のヤマメが跳ね上がった。


「釣れました!」


豊久(とよひさ)は嬉しそうに声を上げる。


「見事だ」


祐兵(すけたか)は笑みを浮かべた。


「流れをよく読んでいたな」


「祐兵(すけたか)殿のおかげです」


豊久(とよひさ)は大切そうに魚籠へ入れる。


その後


祐兵(すけたか)にも当たりがあった。


ゆっくりと竿を引くと


銀色の美しいヤマメが姿を現す。


「さすが祐兵(すけたか)殿」


豊久(とよひさ)が感心する。


「今日は夕餉が楽しみですな」


「十分な数が釣れたら、それ以上は欲張らぬようにしよう」


祐兵(すけたか)は静かに言った。


「必要な分だけいただく。山や川の恵みへの礼でもある」


「はい」


豊久(とよひさ)は力強く頷く。


昼が近づく頃には


二人の魚籠(びく)には食べるのに十分なヤマメが入っていた。


「これだけあれば十分ですな」


「ああ。残りはまた大きく育ってくれるだろう」


二人は竿を畳み


川辺の石に腰を下ろした。


清らかな流れを眺めながら


持参した握り飯を広げる。


「川の音を聞きながら食べる飯は格別です」


豊久(とよひさ)が笑う。


「自然の中でいただく食事は、何よりのご馳走だ」


祐兵(すけたか)も穏やかに答えた。


その時。


「にゃあ」


聞き慣れた鳴き声がした。


小春《こはる》が草むらから姿を現す。


黒猫も少し遅れて歩いてくる。


「小春《こはる》殿まで来られたのですか」


豊久(とよひさ)は驚きながら笑う。


小春《こはる》は二人のそばへ来ると


川辺の石にちょこんと座り


流れる水を不思議そうに見つめた。


黒猫は木陰で丸くなり


涼しい風を受けながら目を細めている。


「今日は皆で涼を楽しんでいるようだな」


祐兵(すけたか)が微笑む。


しばらく四人と二匹は


渓流のせせらぎに耳を傾けて過ごした。


やがて帰る支度を整える。


「館に戻ったら、釣れたヤマメを塩焼きにしていただきましょう」


豊久(とよひさ)が楽しそうに言う。


「ああ。きっと美味いだろう」


夏の渓流には


涼やかな水音がいつまでも響いていた。


自然の恵みに感謝しながら


祐兵(すけたか)と豊久(とよひさ)


そして小春《こはる》と黒猫は


穏やかな足取りで館への道を歩いていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。