↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祐兵さんと豊久くん ――日向の空の下で――  作者: Gさん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
291/375

第二百八十八話 庭の風

祐兵さんと豊久くん 登場人物紹介


祐兵(すけたか)さん…伊東祐兵《いとうすけたか》。紆余曲折を経て、飫肥藩初代藩主になった。知略に優れ、学問を愛する。

豊久(とよひさ)くん…島津豊久《しまづとよひさ》。島津氏家臣で、島津家久《しまづいえひさ》の息子。武芸一筋で、まっすぐな心を持つ。

小春(こはる)と黒猫…二人の飼い猫

翌朝。


夏の日差しは柔らかく


館の庭には爽やかな風が吹いていた。


木々の葉が静かに揺れ


蝉の声が遠くから聞こえてくる。


腹痛もだいぶ治まり


島津豊久《しまづ とよひさ》は薬師(くすし)の言葉に従い


療養を兼ねて庭を散歩することになった。


縁側へ出ると


伊東祐兵《いとう すけたか》が待っていた。


「歩けそうか」


祐兵(すけたか)が穏やかに尋ねる。


「はい」


豊久(とよひさ)は微笑んで頷く。


「まだ少し力は入りませんが、歩くくらいなら大丈夫です」


「無理はするな」


「承知しました」


二人はゆっくりと庭へ降りた。


砂利道を踏みしめながら


ゆっくりと歩みを進める。


色鮮やかな百日紅(さるすべり)が咲き


池には睡蓮の花が静かに浮かんでいた。


「館の庭も、夏の装いですな」


豊久(とよひさ)が足を止める。


「ああ」


祐兵(すけたか)は頷いた。


「季節は静かに移ろい、庭もその姿を変えていく」


池の水面を風が渡り


小さな波紋が広がる。


その時。


「にゃあ」


小春《こはる》が駆け寄ってきた。


嬉しそうに豊久の足元を歩き回る。


黒猫も少し遅れて現れ


静かに二人の後をついてきた。


「心配を掛けましたな」


豊久が小春《こはる》を撫でる。


小春《こはる》は喉を鳴らし


満足そうに目を細めた。


黒猫も豊久(とよひさ)の足元へ座り


静かに尾を揺らす。


「二匹とも、豊久(とよひさ)殿が元気になって安心したようだ」


祐兵(すけたか)が微笑む。


「私も、このように歩けるようになり安心しました」


豊久(とよひさ)はゆっくりと深呼吸した。


夏草の香りが風に乗って運ばれてくる。


「焦らず養生することだ」


祐兵(すけたか)が言う。


「体が資本だからな」


「はい」


豊久(とよひさ)は力強く頷いた。


「早く元気になり、また祐兵(すけたか)殿と稽古や見回りへ参りたいです」


「その日も近いだろう」


祐兵(すけたか)は穏やかな笑みを浮かべた。


庭を一周すると


豊久(とよひさ)は少し汗を拭った。


「今日はこれくらいにしておこう」


祐兵(すけたか)が縁側を指差す。


「欲張らぬことも療養のうちだ」


「承知しました」


二人は縁側へ腰を下ろした。


涼しい風が頬を撫で


風鈴が澄んだ音色を響かせる。


小春《こはる》は豊久(とよひさ)の隣で丸くなり


黒猫も縁側の端へ静かに伏せた。


穏やかな夏の庭には


ゆっくりとした時間が流れている。


療養中の散歩は


豊久(とよひさ)の体だけでなく


心にも優しい力を与えてくれたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。