第二百七十一話 城下を歩く
祐兵さんと豊久くん 登場人物紹介
祐兵さん…伊東祐兵。紆余曲折を経て、飫肥藩初代藩主になった。知略に優れ、学問を愛する。
豊久くん…島津豊久。島津氏家臣で、島津家久の息子。武芸一筋で、まっすぐな心を持つ。
小春と黒猫…二人の飼い猫
翌朝。
夏の日差しが
城下町を明るく照らしていた。
青空には白い雲が浮かび
町のあちこちから威勢の良い声が聞こえてくる。
朝の務めを終えた
伊東祐兵と島津豊久は
城下の見回りへ出かけた。
「今日も暑くなりそうですな」
豊久が空を見上げる。
「ああ」
祐兵が頷いた。
「こういう日は、体調を崩す者も出やすい。町の様子をよく見て回ろう。」
「承知しました」
二人は通りをゆっくり歩く。
魚屋では
朝獲れの魚が並び
威勢の良い掛け声が響いていた。
「新鮮な魚だ!」
「今日も安いよ!」
活気ある声に
豊久は笑顔になる。
「皆、元気そうですな」
「ああ。商いが賑わっているのは良いことだ」
少し歩くと
井戸端で子どもたちが水を汲む手伝いをしていた。
「お侍さまだ!」
子どもたちが手を振る。
豊久も大きく手を振り返した。
「今日も元気ですな!」
「はい!」
元気な返事が返ってくる。
祐兵は穏やかに微笑んだ。
「暑いから、水分をよく取るのだぞ。」
「はーい!」
子どもたちは元気よく頷いた。
さらに歩くと
八百屋の主人が声を掛けてきた。
「祐兵様、豊久様、おはようございます。」
「おはよう」
祐兵が会釈する。
「今年の胡瓜も茄子も、よく実りました。」
「それは何よりだ。」
豊久は籠いっぱいの野菜を見て目を輝かせた。
「どれも立派ですな」
「朝早くから畑へ出ましたので」
主人は嬉しそうに笑った。
町を一巡りすると
どこも穏やかだった。
「今日も平和ですな。」
豊久がほっと息をつく。
「ああ」
祐兵は城下を見渡した。
「何事もない一日こそ、最も喜ばしい。」
その時。
「にゃあ」
聞き慣れた鳴き声がした。
小春が
路地の向こうから駆けてくる。
黒猫も少し遅れて姿を見せた。
「お前たちも見回りか。」
祐兵が笑う。
小春は豊久の足元へすり寄り
黒猫は静かに日陰へ座った。
「頼もしい仲間ですな。」
豊久が優しく頭を撫でる。
町の人々も
その様子を見て笑みを浮かべていた。
「今日も平和だねえ。」
「皆が笑って暮らせる町は良いものだ。」
穏やかな風が
通りを吹き抜ける。
夏の日差しは強かったが
城下には人々の笑顔があふれていた。
祐兵と豊久は
町の平穏を確かめながら
二匹とともにゆっくりと見回りを続けるのだった。




