↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祐兵さんと豊久くん ――日向の空の下で――  作者: Gさん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
273/391

第二百七十話 浜辺にて

祐兵さんと豊久くん 登場人物紹介


祐兵(すけたか)さん…伊東祐兵《いとうすけたか》。紆余曲折を経て、飫肥藩初代藩主になった。知略に優れ、学問を愛する。

豊久(とよひさ)くん…島津豊久《しまづとよひさ》。島津氏家臣で、島津家久《しまづいえひさ》の息子。武芸一筋で、まっすぐな心を持つ。

小春(こはる)と黒猫…二人の飼い猫

数日後。


夏空がどこまでも広がる午後。


白い入道雲が浮かび


青い海は陽の光を受けてきらきらと輝いていた。


穏やかな波が


静かに浜辺へ打ち寄せては返していく。


朝の務めを終えた


伊東祐兵《いとう すけたか》と島津豊久《しまづ とよひさ》は


再び浜辺を訪れていた。


「今日も良い海ですな」


豊久(とよひさ)が潮風を胸いっぱいに吸い込む。


「ああ」


祐兵(すけたか)も微笑んだ。


「波の音を聞いているだけで、心が静かになる。」


二人は松の木陰へ腰を下ろした。


木陰には涼しい風が通り


暑さを忘れさせてくれる。


目の前では


波が規則正しく寄せては返す。


「何も考えずに海を眺めるのも、たまには良いものだ」


祐兵(すけたか)が呟く。


「ええ」


豊久(とよひさ)も頷いた。


「こういう時間があるからこそ、また明日も励めます。」


その時。


「にゃあ」


小春《こはる》が、砂浜を駆けてきた。


少し遅れて


黒猫もゆっくりと歩いてくる。


「また来たのか」


祐兵(すけたか)が笑う。


小春《こはる》は砂の上へ寝転び


ごろりと体を転がした。


「あはは。」


豊久(とよひさ)が思わず笑う。


「砂浴びを楽しんでおりますな。」


黒猫は波打ち際までは行かず


松の木陰で静かに座った。


潮風が毛並みを優しく揺らす。


「黒猫は相変わらず落ち着いている」


祐兵(すけたか)が目を細める。


「小春(こはる)殿とは良い対照ですな」


豊久も穏やかに笑った。


やがて小春《こはる》は遊び疲れたのか


祐兵の足元へ戻って丸くなる。


黒猫も少し離れた場所で伏せ


目を閉じた。


聞こえるのは


波の音と海鳥の鳴き声だけ。


心地よい潮風が


二人の頬を優しく撫でていく。


「豊久(とよひさ)殿」


「何でしょう」


「こうして何事もなく過ごせる日々は、本当にありがたいものだな」


豊久は海を見つめたまま答える。


「はい。この穏やかな時間を守るためにも、我らは日々鍛錬を積むのでしょう」


「ああ。その通りだ」


二人はしばらく言葉を交わさず


静かな海を眺めていた。


白い帆を張った漁船が


ゆっくりと水平線へ向かって進んでいく。


空では一羽の海鳥が


大きく輪を描いて飛んでいた。


夏の午後。


潮風と波音に包まれながら


二人と二匹は


何にも追われることのない穏やかなひとときを


心ゆくまで楽しむのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。