↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祐兵さんと豊久くん ――日向の空の下で――  作者: Gさん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
239/392

第二百三十六話 台風一過

祐兵さんと豊久くん 登場人物紹介


祐兵(すけたか)さん…伊東祐兵《いとうすけたか》。紆余曲折を経て、飫肥藩初代藩主になった。知略に優れ、学問を愛する。

豊久(とよひさ)くん…島津豊久《しまづとよひさ》。島津氏家臣で、島津家久《しまづいえひさ》の息子。武芸一筋で、まっすぐな心を持つ。

小春(こはる)と黒猫…二人の飼い猫

翌朝。


空は澄み渡っていた。


昨夜の暴風が嘘のように


青空が広がっている。


だが——


城下には


台風の爪痕が残っていた。


折れた枝。


倒れた屋台。


散らばった木桶。


道には葉が積もり


あちこちに水溜まりができている。


「これは大変ですな」


島津豊久《しまづ とよひさ》が


周囲を見回した。


伊東祐兵《いとう すけたか》は静かに頷く。


「ああ。まずは片付けだ」


朝早くから


町人たちも外へ出ていた。


皆、箒や縄を持っている。


「祐兵(すけたか)さま!」


「豊久(とよひさ)さま!」


人々が頭を下げる。


「怪我人は?」


祐兵(すけたか)が尋ねる。


「幸い、大きな怪我はありません!」


魚屋の主人が答えた。


「屋根が飛んだ家はあるが、命に別状はないそうです」


「それは良かった」


豊久(とよひさ)がほっと息を吐く。


「では、手分けして片付けましょう!」


「おおーっ!」


町人たちの声が上がった。


小春《こはる》は


濡れた地面を慎重に歩いている。


水溜まりが嫌らしい。


ぴょん、と避けた。


黒猫は塀の上。


静かに城下を見下ろしていた。


「豊久(とよひさ)殿、そちらの材木を頼む」


「任せてくだされ!」


豊久(とよひさ)が倒れた屋台を持ち上げる。


筋肉が盛り上がる。


「おおおっ!」


ぐい、と持ち上がった。


周囲から感嘆の声。


「さすが島津さま!」


「力持ちだ!」


豊久(とよひさ)が少し照れる。


「いやあ、それほどでも」


その横で。


祐兵(すけたか)は崩れた柵を調べていた。


「この縄をこちらへ。柱はまだ使える」


「はい!」


町人たちへ的確に指示を出す。


無駄がない。


次々に道が片付いていく。


昼頃には


市場通りもかなり綺麗になっていた。


その時。


「あっ!」


子どもの声。


風で飛ばされた桶が


川へ流されそうになっている。


豊久(とよひさ)が即座に走った。


「危ない!」


ざぶっ。


水へ踏み込む。


そのまま桶を掴み取った。


「取れましたぞ!」


子どもたちが歓声を上げる。


「豊久(とよひさ)さまー!」


「風邪を引くぞ」


祐兵(すけたか)が呆れ顔で手拭いを投げた。


「ははは!」


豊久(とよひさ)は頭を拭きながら笑う。


昼過ぎ。


片付けが一段落した。


市場では


炊き出しが始まっていた。


温かな雑炊。


焼き味噌の香り。


皆、疲れた顔で笑っている。


「こういう時こそ、助け合いですな」


豊久(とよひさ)が椀を持ちながら言う。


「ああ」


祐兵(すけたか)も頷いた。


「町が無事だったのは、皆が備えていたからだ」


小春《こはる》は


雑炊の匂いにそわそわしている。


「駄目だぞ」


祐兵(すけたか)が言う。


「にゃあ……」


不満そうだ。


黒猫は日向で毛づくろい。


もう完全に落ち着いていた。


風は穏やかだった。


青空が広がる。


台風は去った。


そして城下には


またいつもの日常が戻り始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。