↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祐兵さんと豊久くん ――日向の空の下で――  作者: Gさん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
226/392

第二百二十三話 朝靄の道

祐兵さんと豊久くん 登場人物紹介


祐兵(すけたか)さん…伊東祐兵《いとうすけたか》。紆余曲折を経て、飫肥藩初代藩主になった。知略に優れ、学問を愛する。

豊久(とよひさ)くん…島津豊久《しまづとよひさ》。島津氏家臣で、島津家久《しまづいえひさ》の息子。武芸一筋で、まっすぐな心を持つ。

小春(こはる)と黒猫…二人の飼い猫

早朝。


空はまだ淡く


東の空にわずかな光が差し始めていた。


庭には朝露。


草葉が静かに濡れている。


伊東祐兵《いとう すけたか》は


縁側へ出る。


冷たい空気が頬を撫でた。


「お早いですな」


島津豊久《しまづ とよひさ》が現れる。


まだ少し眠そうだ。


「歩くぞ」


祐兵(すけたか)が言う。


「はい」


豊久(とよひさ)も頷く。


二人は町外れの道を歩き始める。


朝靄。


薄く白い。


遠くの景色がぼやけている。


足音だけが静かに響く。


人はまだ少ない。


店も閉じたまま。


「朝の空気は違いますな」


豊久(とよひさ)が深く息を吸う。


「ああ」


祐兵(すけたか)も前を見たまま答える。


「頭が静かになる」


道端。


小さな花が咲いている。


露が光る。


川へ出る。


水面には薄い霧。


流れは穏やか。


橋の上で足を止める。


風が吹く。


冷たい。


だが心地よい。


「静かですなあ……」


豊久(とよひさ)が呟く。


「ああ」


遠くで鳥が鳴く。


一日の始まりを告げる声。


やがて。


町の方から音がし始める。


戸を開ける音。


荷を運ぶ音。


人々が動き始める気配。


「町が起きますな」


豊久(とよひさ)が言う。


「そうだな」


祐兵(すけたか)は静かに周囲を見る。


「こういう時が、一番隙が少ない」


「皆、まだ余計なことを考えておらぬからですか?」


「ああ」


再び歩く。


朝靄の中を。


ゆっくりと。


茶店の前を通る。


店主が暖簾を掛けていた。


「おはようございます」


「おう、早いなあ」


穏やかな挨拶。


豊久(とよひさ)が笑う。


「腹が減ってきました」


「歩けばそうなる」


「帰ったら飯ですな」


祐兵(すけたか)の口元がわずかに緩む。


朝日が昇る。


靄が晴れていく。


町が光を帯びる。


新しい一日。


穏やかな始まり。


二人は並んで歩く。


静かな朝の中を。


ゆっくりと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。