↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祐兵さんと豊久くん ――日向の空の下で――  作者: Gさん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
222/392

第二百十九話 清流のヤマメ

祐兵さんと豊久くん 登場人物紹介


祐兵(すけたか)さん…伊東祐兵《いとうすけたか》。紆余曲折を経て、飫肥藩初代藩主になった。知略に優れ、学問を愛する。

豊久(とよひさ)くん…島津豊久《しまづとよひさ》。島津氏家臣で、島津家久《しまづいえひさ》の息子。武芸一筋で、まっすぐな心を持つ。

小春(こはる)と黒猫…二人の飼い猫

朝。


山あいには薄い霧。


空気は澄み


川音だけが静かに響いている。


伊東祐兵《いとう すけたか》と島津豊久《しまづ とよひさ》は


釣り竿を手に川へ来ていた。


清流。


透き通る水。


石の間を流れ


陽を受けてきらめく。


「今日は釣れそうですな」


豊久(とよひさ)が言う。


「ああ」


祐兵(すけたか)は流れを見ている。


「水が良い」


川辺へ下りる。


足場を確かめる。


石は滑る。


慎重に。


「静かに動け」


祐兵が言う。


「魚は影にも敏い」


「はい」


糸を垂らす。


餌が流れに乗る。


自然に。


不自然さなく。


風。


水音。


鳥の声。


静かな時間。


「……来た」


祐兵(すけたか)の声。


竿先がわずかに揺れる。


合わせる。


鋭く。


水面が跳ねる。


銀色。


ヤマメ。


「見事です!」


豊久(とよひさ)が声を上げる。


祐兵(すけたか)は静かに魚を取り込む。


「暴れさせるな」


豊久(とよひさ)も竿を振る。


少し力が入っている。


糸が大きく揺れる。


「力みすぎだ」


「難しいですな……」


もう一度。


今度はゆっくり。


流れへ馴染ませる。


ぴくり。


反応。


「……!」


豊久(とよひさ)が合わせる。


水が跳ねる。


魚影。


「釣れました!」


嬉しそうな声。


ヤマメが陽を反射する。


「悪くない」


祐兵(すけたか)が頷く。


その後も。


数尾。


必要な分だけ釣る。


無駄にはしない。


川辺へ腰を下ろす。


竹筒の水を飲む。


風が涼しい。


「こういう時間は良いですな」


豊久(とよひさ)が空を見る。


「ああ」


祐兵(すけたか)も短く答える。


ふと。


水面に影。


大きな魚影が走る。


「今のは大きかったですぞ!」


豊久(とよひさ)が立ち上がる。


「慌てるな」


祐兵(すけたか)が言う。


「大物ほど、待つ」


再び静かに構える。


流れを読む。


風を読む。


気配を消す。


そして——


ぐっと竿が引かれる。


「来た!」


豊久(とよひさ)が耐える。


強い引き。


川面が荒れる。


「無理に引くな!」


祐兵(すけたか)の声。


豊久(とよひさ)が踏みとどまる。


呼吸を整える。


魚の動きに合わせる。


やがて。


水面へ姿を見せる。


大きなヤマメ。


「……やりました!」


豊久(とよひさ)が笑う。


祐兵(すけたか)もわずかに目を細める。


「良い魚だ」


春の川。


澄んだ流れ。


穏やかな陽。


二人は静かな時間の中


今日もまた


自然と向き合っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。