第二百十四話 変わらぬ日々
祐兵さんと豊久くん 登場人物紹介
祐兵さん…伊東祐兵。紆余曲折を経て、飫肥藩初代藩主になった。知略に優れ、学問を愛する。
豊久くん…島津豊久。島津氏家臣で、島津家久の息子。武芸一筋で、まっすぐな心を持つ。
小春と黒猫…二人の飼い猫
朝。
空は晴れ
柔らかな光が庭を照らす。
鳥の声。
風の気配。
伊東祐兵は
庭に立つ。
木刀を手に。
静かに構える。
「参ります」
島津豊久が向かい合う。
木槍を構える。
踏み込み。
打ち合い。
乾いた音。
朝の静けさに響く。
「……良い」
祐兵が言う。
豊久が頷く。
鍛錬が終わる。
息を整える。
空を見上げる。
「良い朝ですな」
「そうだな」
台所。
湯が沸く。
簡素な朝餉。
飯と味噌汁。
少しの漬物。
「いただきます」
静かな声。
箸が進む。
食後。
二人は城下へ出る。
通り。
いつもの賑わい。
商人の声。
子供の笑い。
「変わりませぬな」
豊久が言う。
「ああ」
祐兵が答える。
茶屋の前。
看板娘が手を振る。
「いらっしゃいませ」
「また寄ります」
豊久が笑う。
川辺。
水は流れ。
魚影が揺れる。
橋を渡る。
風が通る。
「……平和ですな」
豊久がぽつりと。
祐兵は少しだけ間を置き。
「ああ」
と答える。
「だが」
その先を続ける。
「守ってこそだ」
豊久が頷く。
「はい」
館へ戻る。
庭。
縁側。
小春が丸くなっている。
「ただいま」
豊久が言う。
小さく鳴く。
祐兵は腰を下ろす。
茶を飲む。
湯気。
静かな時間。
何も起きぬ一日。
だが。
それこそが。
積み重ねたもの。
戦の間。
騒ぎの合間。
そのすべての先にあるもの。
変わらぬ日々。
穏やかな流れ。
二人は言葉少なく。
ただ、その中に身を置く。
それが続く限り。
守るべきものもまた
ここに在る。




