日律帝國最後の反抗28
mitotayo
さて……、夏休みに入って何に対してもやる気が起きなくなったmitotayoです。今回からはレイブン側の視点で話を書いていこうと思います。主人公は勿論あの男、金髪で黄色に近い栗色の瞳をしている身長178cmのイケメン、アウグレット・フェルトです。(いきなり新しい設定足すなよ)
〈三十二話 次なる戦いへ〉
8月25日午後9時、レイブン皇国の第一機動艦隊はマッツウェーク島で戦力の補強が完了し、出港しようとしていた。
「補強のために来た艦艇は何隻?」
アウグレットは一歩後ろを歩く直属の部下であるエレールに聞いた。
「航空母艦が3隻、重巡が4隻、軽巡が7隻、駆逐艦が……、多数です」
「多数?」
「正確な情報は私達末端には知らせてくれないものですからね……」
エレールの言葉を聞いて僕は苦笑した。
「情報屋の君でも知らないとは思わなかったな」
「逆に中隊長は知らないんですか?」
エレールが少し怪訝な顔で聞いてきた。
「あぁ、昇進したところで僕も結局はただの中尉だからね」
僕はそう言って肩をすくめた。
「今回の補強、一体何の為なんでしょうね」
「そりゃ戦争だろう」
「そんな事は分かってますよ……」
からかわないでくださいとエレールは少し怒った口調で言った。エレールは僕の1個下というだけで少し幼く見られることが多いが、きっと言動が影響してるんだろうな。
「ウォール島だ」
僕がそう言うと、エレールはきょとんとした顔になった。
「ウォール島、ですか……?」
「次の攻撃目標だ」
エレールは一瞬考える素振りをしてから口を開いた。
「中隊長、よく言葉足らずって言われませんか?」
「……黙れ」
しまった、思わず口走ってしまった。謝ろうとエレールの方を向いた。
「あぁ……、これが愛の鞭というやつですか……」
──なんだこいつ。
何でエレールはそんな恍惚な笑みをしているんだ。罵倒されるのが好みなのか?
「……うん、まぁそれで良いよ」
僕は呆れて言葉も出なかったからそれだけで済ました。
「それと……。戦艦が3隻来ています」
「……は?戦艦?」
僕は耳を疑った。この第一機動艦隊に戦艦が配属されたことはないからだ。
「鈍重な戦艦を連れてきて一体なにするつもりなんだか……」
エレールが呆れたようにため息をついた。
──理由は分かっている。ウォール島が奪還できるなら地上施設を破壊してしまっても構わないということだろう。だとしてもだ……。
「レイブン皇国の戦艦は日律帝國のものと違って足が遅すぎる。合流した戦艦の形式は?」
「うーんと……、”ソブリン級”の”コンスタンシー”と”インテグリティ”、それから”コンコルド級”の”レゾリュート”の3隻のようです」
エレールは軍服の胸ポケットからメモ帳を取り出して戦艦の名前を読み上げた。
──ソブリン級とコンコルド級……。どちらも近代型戦艦として戦場でまだ通用はするが明らかに旧式の戦艦たちだ。これは、日律帝國を舐めているということか……?
僕が考え込んでいると歩いている廊下が大きく揺れた。壁に手をついて揺れが収まるのを待つ。
「動き出しましたね」
「あぁ。早く部屋に戻るぞ」
僕は揺れが収まった廊下を早足で歩く。
──あんたとはまた会いたいが、もう空戦の中では会いたくないな。
不意に白石の声が頭に響いた。と同時に頭にチクリとした鋭い痛みがした。
──白石は、次の戦場にもいるんだろうか。
ふとそんな考えが頭をよぎった。過去に僕がした事を許して貰えたとは思っていない。だけど知っている人と殺し合いたいと思う人なんて、僕を含めてきっとこの世界にひとりだっていないだろう。
──でも、会ったら殺し合わないといけない。
僕にはその事実がとても恐ろしく思えた。
──……いや、違う。殺し合うこと自体が恐ろしいんだ。
そんなこと気付きたくなかった。あの島で白石と出会わなかったら知らないままでいられたんだろうか。
「そうじゃない」
そのことには気付くべきだ。気付かないまま戦い続けるよりかはマシだ。でも……、
「気力が要る、な……」
「中隊長?」
僕の思考を打ち破るようにエレールの声が廊下に響いた。
「どうした?」
「部屋、とっくに通り過ぎてますよ」
「……気付いてたならもっと早く言いなさい」
周りを見渡してため息をつきながら僕がそう言うと、エレールは気を付けますと言って意地悪っぽく笑った。中性的な顔つきをしているからか、男性がぶりっ子する時に感じる独特な気持ち悪さを微塵も感じられない。
──とにかく、今は生き延びることを考えなければな……。
そう考えながら僕は来た道を引き返して自室へと足を進めた。
「これが新型戦闘機ですか?」
翌朝、僕はエンタープラネット航空隊の隊長であるドリス・マーベライト少佐に呼ばれて格納庫に来ていた。
「あぁ、そうだ。」
マーベライト少佐は神妙に頷いてその機体の翼に手を置いた。
「F-5ガーディルタイガー。F-4エンゼルタイガーに代わる新型戦闘機だ」
「ガーディルタイガー……」
僕はその新しい戦闘機の名前を噛みしめるように呟いた。
「ガーディル。響きの通りガーディアンという単語から来ている」
「守護者……ですか」
「西方戦線ではもう既に実践投入されているらしい。俺達のことは後回しだとよ」
少佐は左手で頭を掻くと呆れたように笑った。
「そこまで西方戦線が逼迫している、ということでしょうか」
僕がそう言うと、少佐は一瞬真顔になった後大きな声で笑い出した。
「お前は大真面目だな!俺はただ単に日帝のことを舐めているんだと思ったぞ!」
壁の厚い格納庫だが、それでも外に漏れ聞こえてしまうんじゃないかと思うくらいの大声だった。
「お言葉ですが少佐。我々はここまで苦戦しているのです、戦況を全て知っている参謀本部が日帝を舐める筈がないと思うのですが」
そう言うと少佐は急に真顔になって何か考え出した。その表情の変化にこっちが笑ってしまいそうだった。
「フェルト中尉。我々が居る大東海戦線に位置する敵国を挙げてみろ」
「はっ。日律帝國、シャマ王国……、那満国?」
「馬鹿言え、那満国は第一次世界大戦で中子民国に併合されたろ」
「あぁ、そうでしたね」
──那満国は元々独立した王国で、中子民国と似た血筋を持つ遊牧民族だったはずだ。そういえば第一次世界大戦に参戦していたような気もする。昔のことだから覚えていないだけで、那満国は既にこの世にないのか……。
「日律帝國、シャマ王国。大東海戦線の主な敵はそれくらいだろう?では西方戦線はどうだ?」
「西方戦線……、ドミル帝国、ラティア王国、マジャール王国にスオミア共和国……」
「ダキアとブルガールもだな。ついでに言えばドミルは既にレヒア共和国の西半分とハプス帝国を飲み込んで、フライツ王国も降伏に追い込んだ。分かるだろう、敵の量が違うんだ」
そう言われて僕は改めて敵の多さを理解した。
「だから西方戦線に戦力を回さざるを得ないわけですね」
「そういうことだ」
少佐はとても満足そうな顔をしてそう言った。
「まぁ、敵が多いということはその分味方も多いんだがな。レイブン皇国の皇帝陛下様はその味方を信頼していないようだ。……どちらにせよ大東海戦線を舐めてるのには変わりはないがな」
少佐が嘲笑気味にそう言って出口へ歩き出した。
「何処へ行かれるのですか?」
「煙草だよ」
僕の質問にそれだけ答えて少佐はドアを開けた。
「1時間後、ここに戦闘機隊のパイロットを全員集合させろ。ウォール島に着くまでに慣熟飛行を済ませるんだ」
「はっ!」
ドアが閉まり、ひとり残された僕はガーディルタイガーの翼に手を置いた。
──イルカのノーズアート、書き直さないとな。
金属特有のひんやりとした感覚を感じながら僕はふとそう思った。
〈エレールについて〉
フルネームはエレール・ファミルトン。22歳で階級は曹長。アウグレットよりも年上でありながらその階級差を妬むことなく素直に受け入れる純粋な心の持ち主(アウグレットは士官学校出身なので階級が上なのは当たり前)。
赤っぽい茶色の髪と琥珀色の瞳、中性的かつ美形な顔立ちの容姿を持ち、尚且つ身長が188cmと高身長で女性から言い寄られる事もしばしば。一方でエレール自身は何かがきっかけで自分を「出来損ない」だとコンプレックスを抱いている。
航空機の操縦術は中の上程度で、あくまでアウグレットの補助に入ることを優先しているので撃墜数よりも共同撃墜数の方が圧倒的に多い。




