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クラフトマスター建国記〜転生により不治の病を克服した少年は異世界で『至高の国』を再建する〜  作者: ウィースキィ
第一部 第一章 新たなる世界 【第一次王国 編】

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第12-3話 お友達と一緒に


 王都の石畳を踏みしめながら、リアと愁は街の賑わいを楽しんでいた。


 色とりどりの店が立ち並び、香ばしい焼き菓子の匂い、スパイスの効いた料理の香りが風に乗って漂ってくる。時間が経つのも忘れ、二人でさまざまな店を覗いていると、気がつけば昼を回っていた。


「そろそろお昼にしようか?」


「はい!わたしもお腹空いちゃいました!」


 リアが笑顔で応じる。ちょうど何を食べるか考えようとしたその時、少し離れた場所から元気な声が響いた。


「あれー?リアだ!久しぶりー!」


 その声の主は、小走りで駆け寄ってくる栗色の髪の少女——ユアだった。彼女は白い騎士服を纏っていたが、女性用なのかスカート仕様になっている。無邪気な笑みを浮かべながら、リアの元へと駆け寄る。


「あっユア!久しぶり!こんなところで会えるなんて。この前は本当にありがとうね」


「ううん、大丈夫だよ!」


 リアはぱっと表情を輝かせ、ユアと向かい合った。再会の喜びが全身から溢れ、自然と二人の距離が縮まる。


 そんなリアの様子を微笑ましく見つめていた愁に、ユアが気づく。


「あ、えっと、初めまして?ですよね!リアのご主人さまですか?」


 明るく尋ねるユアに、愁は苦笑しつつ自己紹介をする。


「初めまして。俺は八乙女 愁って言います。よろしくね。この前のことは俺からもお礼を言わせてもらうよ。本当にありがとう。おかげで無事にリアに会うことができた。ユアちゃんのお師匠様にもよろしく伝えておいてね」


「はい!お仕事から帰ってきたら伝えておきます!」


 礼を交わすと、リアとユアはすぐに楽しげに会話を弾ませた。互いに声を弾ませ、時折笑い合いながら、まるで姉妹のように寄り添って話している。


 そんな二人の様子を眺めながら、愁はふとある考えを思いつき、提案する。


「そうだ。ユアちゃん、これから少し時間あるかな?今、二人でお昼を食べようとしてたんだけど、一緒にどうかな?この前のお礼も兼ねてご馳走するからさ」


「そんな!いいんですか?」


「ああ、リアもその方が喜ぶからね」


 リアが嬉しそうにユアを見つめると、ユアも「じゃあ、お言葉に甘えます!」と満面の笑みを浮かべた。


 店の選定は王都に詳しいユアに任せることになり、彼女の案内で目的地へと向かう。


 道中、ユアは自然とリアの手を取り、二人は寄り添うように歩き出す。その姿は、まるで長い間離れ離れになっていた姉妹が、再び手を取り合ったかのようだった。


 やがてたどり着いたのは、王都でも評判の高い飲食店だった。


 値段も手頃でありながら、味の評価が非常に高いという。昼時のためか店内は賑わっていたが、幸いにも空いている席を見つけ、三人はそこに腰を下ろした。


 王都は海が近く、新鮮な魚介類が手に入るため、この店でも海鮮をふんだんに使った料理が楽しめるらしい。


 愁はメニューを眺めながら、久しぶりに魚介料理が食べられることに密かに期待を膨らませる。


 そんな和やかな時間の中、突然、場の空気を壊すような怒声が響いた。


「おい!なんでここに薄汚い亜人なんかがいるんだ!せっかくの酒が不味くなるじゃないか!」


 振り向くと、身なりの良い貴族らしき男が三人、酔いでふらつきながらこちらへ近づいてきていた。


 男はテーブルを拳で叩きつけ、さらに罵声を浴びせる。


「今すぐに出ていけ!私は男爵位を持つ貴族ファブレス家の長男なんだ。亜人なんて殺したところで、どうとでも処理できるんだぞ!」


 その言葉と共に、男は腰の剣を抜き放ち、リアに向かって斬りかかった。


 愁は即座に動こうとするが、それよりも速くユアの剣が、貴族の男の剣を受け止めていた。


 ピンク色の光が剣の形を象る、ユアの魔剣。彼女の目は鋭く光り、怒りの炎を宿していた。


「いきなり何なの!私の友達に手を出そうとするなんて!」


 ユアが食って掛かると、護衛らしき男たちも腰の剣を抜き放った。しかし、次の瞬間——気づけば、護衛の男二人は地面に倒れていた。


 愁ですら目を見張るほどの速さだった。ユアは一瞬で二人を気絶させ、さらに貴族の男の首筋へと剣を添えている。


「お前じゃ私は殺せないよ」


 貴族の男は青ざめ、震えながら喚く。


「くそ!なんなんだ貴様は!こんなことしてただで済むと思うなよ!」


 貴族の男が唾を飛ばしながら叫ぶ。しかし、ユアは動じることなく、ゆっくりと胸元に手をやると、一つのネックレスを取り出した。


 それは王家の紋章が刻まれた、勇者の弟子や従者にのみ授けられる、身分を示す証。


「そ、それは王家のネックレスだとっ!?」


 男の顔色が一瞬で変わった。額に滲む汗、泳ぐ目――彼の動揺が手に取るように分かる。


「くそ!今日はこのぐらいにしてやる!おい!帰るぞ!」


 倒れた護衛を無理やり引き起こし、男は足早に店を後にした。


 ざわめいていた店内に静寂が戻る。


 ユアは肩をすくめ、リアの方を向いて微笑んだ。


「まったく、貴族って面倒くさいね」


 リアはふっと笑い、ユアの手をそっと握る。


「……ありがとう、ユア」


 その言葉にユアの目が優しく細められ、ぎゅっと、リアの手を握り返す。


「当たり前でしょ?だって、リアは私の大切な友達なんだから!」


 その言葉がリアの胸に深く染み渡った。驚きよりも、嬉しさの方がずっと大きい。心の奥にじんわりと温かさが広がり、まるで春の日差しに包まれたようだった。


 リアはユアの顔をじっと見つめる。まっすぐな瞳には迷いの影などなく、ただ純粋な想いだけが宿っている。


 この瞬間、二人の絆はさらに深まった。


「それにしても、まったくふざけたやつらだよね!」


 ユアは腕を組みながら、先ほどの出来事を思い出すように顔をしかめた。その仕草はどこか子どもっぽく、それでいて頼もしさを感じさせる。


「うん。すごくびっくりした……」


 リアは静かに頷きながら、胸の鼓動を落ち着かせる。


 あの時、ユアは何の躊躇もなく貴族の傍若無人な振る舞いに立ち向かった。その勇気は、ただの向こう見ずな行動ではない。しっかりとした『実力』があるからこそできるものだ。


 そして何よりも、ユアは心からリアのことを大切に思ってくれている。一連のやり取りを見ていた愁は、それが一番嬉しかった。


 さらに言えば、ユアの剣技は目を見張るものがある。不意を突かれれば、並の剣士では到底対応できないだろう。その速度は、まだ幼いとは思えないほどの精度を誇っていた。


「凄い剣技だね、ユアちゃん。特に護衛の二人を倒した時、剣の腹で的確に顎を打ったのは見事だったよ。普通、あんな正確に制御できるものじゃないからね」


「え?愁さん、今の見えてたんですか?」


 驚きに目を丸くするユア。その瞳が、興味と尊敬の色を帯びて輝いた。


「ああ。俺も剣を嗜んでいてね。俺に剣を教えてくれた人がすごく速かったから、見切るのには慣れてるんだ」


「そうなんですか!あの速度を見切れる人なんて滅多にいないので、ちょっとびっくりしちゃいました!」


 ユアの栗色の瞳が輝き、口元に嬉しそうな笑みが浮かぶ。その姿はまるで陽だまりの中で戯れる子猫のように無邪気で愛らしい。


「ははは、それじゃあ、気を取り直して料理を頼もうか。お腹減ったし、二人とも好きなもの頼んでいいよ」


 さっきまでの緊張感が嘘のように、場の空気が和らいだ。どこか張り詰めていた空気がほぐれ、心地よい食事の時間が始まろうとしていた。


 しばらくして、テーブルに運ばれてきた料理はどれも芳ばしい香りを漂わせていた。


 愁の注文したのは、バターを乗せた白身魚に香辛料と塩をまぶし、蒸し焼きにしたもの。リアは魚の唐揚げにポタージュと焼きたてのパン。ユアは具沢山の魚介スープとシンプルな焼き魚。湯気が立ち昇る料理の香りが鼻腔をくすぐり、食欲をそそる。


「それじゃあ、いただこうか」


 二人が顔を見合わせ、声を揃えて元気よく言う。


「いただきます!」


 スプーンを手に取り、口に運ぶたびに、幸せが広がっていく。


「リア!この焼き魚すっごく美味しいよ!食べてみて!」


 ユアが焼き魚をフォークで取り、リアの前へ。


「はい!あーん!」


「え?うん!あーん……ん!」


 じゅわっと口の中で広がる旨み。リアの頬が自然とほころぶ。


「えへへ、美味しいでしょ?」


「うん!」


 次はリアがユアへ自分のスープをすくい、差し出す。


「お返しに、これもどうぞ。あーん」


「あむっ!んんっ、美味しい!」


 屈託のない笑顔を交わす二人を前にしながら、愁は心の中でやや邪な思いを抱いていた。


(これが百合か……)


 その後も、二人は時間を忘れたかのように楽しそうに語り合い、笑い合った。しかし、時計の針は無情にも進む。


「あ!もうこんな時間だ!戻ってお家の片付けしないと、お師匠さまに怒られる……」


 ユアが焦った様子を見せる。まだ遊び足りないのだろう。そんなユアに、リアは優しく微笑んで言った。


「大丈夫だよ、ユア。また今度ゆっくり遊ぼう?」


「そうだね。また近いうちに王都に連れてくるから、その時また遊んでくれるかな?」


 励ますように愁も言うと、ユアの顔がぱっと明るくなった。


「うん!わかった!私は王都の教会の裏のお家にお師匠さまと住んでるから、今度来た時は寄ってね?」


「うん。お稽古、頑張ってね」


「リア……っ!」


 突然、ユアがリアに抱きついた。リアも驚きながらも、すぐに背中に手を回し、ぎゅっと抱きしめ返す。


「リアも元気でね!愁さんも、今日はお昼ありがとうございました!」


「いえいえ。これからもリアをよろしくね。気をつけて帰ってね」


 ユアは大きく手を振りながら、店を出て行った。


 姿が見えなくなるまで見送るリア。その横顔は、とても嬉しそうだった。それを見て、愁もまた心の中が温かくなる。


 なぜなら――『リアの幸せが、また一つ増えたのだから』。


「良い友達ができたみたいで、よかったね」


「はい!ユアは、大切なお友達です!」


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