日常23
その夜、ドリーとアンナに明日から冒険者稼業を再開することを伝えた。
アンナは心配そうだったが、ドリーはそろそろ復帰するだろうと思っていたようで無理はするなよと中古した後、承諾してくれた。仕事の方はいつものように朝と夜だけにしといてくれるようだ。
エリーは仕事が増えると嘆いていた。
皿洗いの仕事を終えてから、ヘルムを部屋に呼んでお互いの情報交換とこれからの予定を操舵することにした。
「さて、名前はヘルムでいいんですよね。」
「ああ、それでいいよ。正直自分の名前も思い出せないし、このヘルムがチャームポイントなところがあるしね。」
ヘルムは自分の頭を指して陽気に答える。
「ところで、まだ素顔を見てないのですが、それは外さないんですか?」
パーティーになるのだからお互いの顔を知っておかないとおかしい。
そもそもなぜいまだに被っているか謎だ。
「実はこれ、外れないんだよ。いくら引っ張ても取れないんだ。ギルドの人曰く迷い込んだ時に何らかの原因ではまってしまったんじゃないかと言っていたよ。調べたところ、どうやらこのヘルムは呪われているそうなんだって、それで外れないみたいなんだ。一応、呪いを解く方法はあるそうなんだけど、そういったのは王都にあるらしいんだけど、とても高いそうだよ。」
ヘルムの発言には驚いた。
呪われた装備というものはあまり存在しない。まれに、魔力が多い場所に放置された武器に魔力が宿り魔物化し、意思を持つものを呪われた武器と呼ばれている。魔力が宿る少し前の状態で手にすると所有者の精神を犯し発狂してしまうことがある。なので、長年放置された武器はむやみに素手で触ってはいけない。布で包んでギルドに提出し、呪われていないか調べてた後、拾った人間のものになる。呪われた武器を魔物が持つと凶暴化する。その魔物は他の個体より強いと言われている。そういった魔物を倒し、手に入れた武器は呪いが解けており、通常の武器より良いものに変化していて、能力を有してることがある。そういったものは魔剣と呼ばれる。
もしも出会うことがあればぜひ倒して武器を奪いたいところだ。
防具は魔力を帯びることがあまりない。
冒険者が死んで長年放置されることによって、防具の下の冒険者の骨だけが、アンデット系のスケルトンに変化する。防具が魔物化するより先に、その所持者が魔物化してしまうのだ。
鎧を着たスケルトンはそこまで珍しくないが、防具が魔物化したスケルトンはあまり現れない。そういったスケルトンはかなり魔力の濃い場所にいたか、討伐されることなくさまよい続けた結果、防具に魔力が宿り魔物化したのだと言われている。
防具を着たアンデットを倒すと中のアンデットは塵とかして、魔石だけ残る。防具はただの防具のままで特に魔力を帯びてはいない。魔物化した防具を着たアンデットを倒すと防具とアンデットは両方塵に返り魔石のみが落ちている。
武器などの呪い。基、魔力によって変化した武器は浄化することができる。
浄化することによって普通の武器に戻すことができるが、お金がかかるのでほとんどの人がその武器を廃棄する。せっかく拾っても普通に買った方が安くつくからだ。
呪われた防具といのは実際は存在しない。
なので、ヘルムの防具は『迷い人』の持つ何かによって生じているものだろ思われる。
『迷い人』は色々な能力を有していることがある。その能力によって防具が呪われているのかもしれない。
「そんなの被ってて大丈夫なんですか?」
「うーん。今のところ異常はないよ。ギルドの人も困っていたよ。一応、浄化の魔法を使える人に浄化してもらったんだけど、取れることはなかったね。『迷い人』特有の能力かもしれないとギルドの人が言っていよ。結局、取りあえず今は経過観察が必要だってことになったよ。」
ヘルムは首を左右に振りやれやれという動きをした。
「ギルドも結構いい加減だな。まあ、『迷い人』のことは今でも謎だらけだから彼らも手の出しようがないのかな。」
『迷い人』については突然現れる自然現象ととらえているところが大きく、調査はするが、なぜ現れるかはいまだに謎だ。人によってやってくる理由もバラバラで、やってくる場所も違うそうだ。そういった調査は王都でいまだに行われているが解明はされていない。
「ああ、それとこれは一応秘密にした方がいいと言われたのだけど。この防具には秘密があるんだ。」
ヘルムはそういうと自分の被っている兜の顔の部分を上にあげる。
「えっ!」
顔の部分を開けるとそこには暗闇が広がっていた。あるはずの顔がなく、ただ黒い霧のようなものが漂っていた。
「実は、首から上がないみたいなんだよね。ほら、こうやって手を突っ込むと。」
そう言って、手を黒い霧の中に突っ込むと腕の先が消えていった。
腕を引き抜くと手はそのままだった。
「どうやらこの先、謎の空間になっているみたいなんだ。」
まるであたりまえのことのように語る。
「それでどうやってご飯とか食べてるんですか、それにどうやって息してるんですか?」
口も鼻もないのにどうやって息をしているのだろうか。
それに口がなければ物を食べることもできないだろうに。
「一応、食べ物を入れると口に入った時の感覚があってちゃんと物を食べれれるんだ。呼吸もちゃんとしてるっぽいよ。息を止めると苦しいしね。それにそれ以外にもこんなことができるんだ。」
そう言うとまた手を突っ込むと、今度はその手に弓矢を握っていた。
「ギルドの人曰く、小型のアイテムボックスというものらしいよ。このヘルムの口より大きなものは入らないけで、それ以外ならある程度の量が入るんだ。今は弓矢でいっぱいだからこれ以上は入らないけどね。」
どおりで弓を買ったのに矢筒をもっていなかったわけだ。
「ということは、もしかしてヘルムの『迷い人』としての能力ってこれですか?」
「実はそうなんだよ。だから僕は王都には呼ばれなかったみたい。技術面はまったく役に立つ知識もなかったかね。」
ヘルムは頭をかくジェスチャーをしなが困った様子だった。
「だから、ちょっと便利な能力がある一般人って認識でいいと思うよ。」
ヘルムの能力は特に期待していなかったので特に落胆はなかった。ただ、まさかこんなにあっさりと秘密を話してくれるとは思わなかった。パーティーとして信頼してくれているのだろうか。
「なるほど。ヘルムの秘密は分かりました。今度は僕の秘密を教えますね。」
「おっと、その前にその丁寧語をやめないかい。これからパーティーを組むんだし、お互いもっとフランクに話そうよ。」
ヘルムはおどけた風に言った。
「わかりました。――っと、わかったよ。」
ヘルムは嬉しそうに頷きながら取り出した弓矢をその顔にしまい込んだ。
「それで、リック君の秘密ってなんだい。まさか、実は女の子とかなら最高なんだけどな。」
「何言ってんですか、男ですよ。ていうかどう見ても男でしょう。」
「いや、可愛らしい顔をしているからてっきり女の子かもと疑っていたんだがね。」
この発言はかなり衝撃だった。
自分ではかなり男らしくなったと思っていたが、どうやらまだ幼く見えているようだ。
確かに身長はまだそこまで高くないが、いずれ大きくる予定だ。将来は長身の筋肉粒々の厳つい漢になっているはずだ。
「ま、まぁいいです。取りあえず、身体強化は多分覚えていると思うけど、それの応用の方法を教えるよ。これはかなり自己流なんだけどね。」
「ああ、一応覚えたけどあれは無免には、ちょっとした生活の知恵程度しか効果がないってきいたけど。」
「いや、訓練で解放者までとはいかないけど、それなりの力にはなるよ。副産で筋力がついたりするし、やった方がいいよ。」
「おお、それはいい。で、どうやるんだい。」
その後はヘルムに全身強化の方法を教えた。
最初は普通の強化を使いどの程度発動に時間がかかるか見る。大体、一、二分かかった。これは部分強化なので時間がかかる。今度は全身強化を試す。一瞬だけだがで全身を強化することができた。
全身強化は体の魔力をまばらに流した状態で強化するので一か所に集中するより容易にできるが、疲労度はけた違いだ。
ヘルムは一回使うだけで、かなりへとへとだった。
魔力の流れ意識することで出力を絞れるようになると説明し、それがうまく調節できるようになると、部分強化の発動が早くなり、なおかつ筋力が上がることで、強化の力と時間が上がることを教えた。
ヘルムはそれを聞いて嬉々として全身強化をするがうまく調節できず、数分後動けなくなってしまった。
しょうがないので引きずって部屋まで運んでやった。
可愛そうに、明日きっと尋常じゃない筋肉痛に苦しむだろう。




