第九十八話 限界
黒幕の力はさらに増大し、シエル達を追い詰めていきます。
それでも彼女達は諦めません。
守るべきものがあるのですから。
「私はまだ完成していない」
その言葉と共に。
黒幕の身体がさらに膨張した。
黒い霧が渦を巻く。
増殖した腕。
巨大な翼。
そして額から黒い角が突き出した。
「おいおい……」
ユウトが顔を引きつらせる。
「まだ変わるのかよ」
「本当にしつこいっすね」
シアも呆れたように呟く。
だがその表情には余裕がなかった。
次の瞬間黒幕が消えた。
◇
ドォォォォォン!!
◇
「ぐっ!」
シエルの身体が吹き飛ぶ。
地面を何十メートルも滑る。
「シエル!」
ユウトが叫ぶ。
すぐに立ち上がる。
だが肩から血が流れていた。
今までで最も深い傷。
「大丈夫よ」
そう言う声も少し苦しそうだった。
黒幕は止まらない。
次の標的はシア。
増殖した腕が襲い掛かる。
避ける
受ける
反撃する
だが手数が多すぎる。
◇
ドゴォォォッ!!
◇
「っすぅ!?」
シアが吹き飛ばされた。
大地が砕ける
砂煙が舞う
そしてシアは膝をついた。
初めてだった。
黒龍が膝をついたのは。
「シア!」
「大丈夫……じゃないっすね」
それでも笑う。
だが口元の血は隠せない。
レオンが剣を握る。
「私も出る!」
飛び出す。
鋭い斬撃。
騎士団でも上位の実力。
だが黒幕は片手で受け止めた。
「弱い」
その一言。
そしてレオンも吹き飛んだ。
地面へ叩きつけられる。
「がはっ……!」
戦力にならない。
その現実が重い。
◇
静寂。
◇
黒幕はゆっくりと歩き出す。
その姿を見てシエルとシアは視線を交わした。
「……」
「……」
二人だけに分かる会話。
そしてシエルが小さく息を吐いた。
「仕方ないわね」
シアも苦笑する。
「バレるっすよ?」
ユウトが首を傾げる。
「何が?」
二人は答えない。
ただゆっくりと前へ出た。
「ユウト」
シエルが呼ぶ。
「少しだけ驚かないで」
「いやその前振りで驚くなは無理だろ」
ユウトが即答した。
シアが笑う。
「それもそうっすね」
そして二人の身体から膨大な魔力が溢れ始めた。
第九十八話をお読みいただきありがとうございました!
シエルとシアですら押し込まれるほどに強化された黒幕。
レオンも加勢しますが、状況は好転しません。
しかし二人はまだ何かを隠しているようです。
次回、その秘密が明かされるかもしれません。
それではまた次回!




