第九十四話 禁忌の先へ
黒幕による追加投与。
禁忌の先へ踏み込んだ研究者は、さらなる力を求めて変貌を続けます。
注射器が首へ突き刺さる。
◇
グシャァッ!!
◇
黒い液体が男の体内へ流れ込んだ。
一瞬の静寂。
そして
◇
「アァァァァァァァァァッ!!」
◇
絶叫。
研究所全体が震える。
男の身体が異常な速度で変化を始めた。
◇
筋肉が膨張する
骨格が軋む
黒い鱗が全身を覆い始める
◇
「おいおい……これはヤバくないか?」
ユウトが顔を引きつらせた。
「それ絶対やっちゃ駄目なやつだろ」
「同感っす」
シアも珍しく真顔だった。
だが男は笑っていた。
苦しみながら
身体が崩れながら
それでも
「素晴らしい……」
恍惚とした表情。
「これです」
「私はこの先を見たかった」
その姿にレオンですら嫌悪感を隠せない。
「狂っている……」
男は答えない。
いや、聞こえていないのかもしれない。
研究への執着だけが残っている。
そして背中から何かが飛び出した。
◇
ブチブチブチッ――
◇
肉を裂きながら生える巨大な翼
不完全
歪
だが圧倒的だった
◇
「来るっ!」
シエルが叫ぶ。
次の瞬間男が消えた。
いや。
速すぎて見えなかった。
◇
ドゴォォォォォン!!
◇
シアの身体が吹き飛ぶ。
「シア!」
ユウトが叫ぶ。
壁を突き破りながら転がる。
だがシアはすぐに立ち上がった。
「いててっす……」
しかし口元から血が流れている。
初めてだった。
この戦いで明確なダメージを受けたのは。
「速い……!」
シエルが剣を構える。
だが男は止まらない。
黒い残像を引きながら突っ込んでくる。
剣と爪が激突する。
◇
ガキィィィン!!
◇
衝撃
シエルの身体が数メートル後退する。
「そんな……」
レオンが息を呑む。
さっきまで押していた二人が
今は押されている。
完全に
「ふふっ……」
男が笑う。
だがその顔はもはや人間のものではなかった。
「まだです!まだ足りない」
全員の背筋が凍る。
今のでまだ完成じゃない。
そう言っているのだ。
「マジかよ……」
ユウトが呟く。
嫌な予感しかしなかった。
第九十四話をお読みいただきありがとうございました!
終焉因子を追加投与した黒幕。
その力はシエルとシアをも押し返し始めました。
しかし彼自身も、すでに人としての限界を超えつつあります。
次回、研究所そのものを巻き込む異変が起こります。
それではまた次回!




