第九十三話 本気
研究所最深部で始まった黒幕との戦い。
終焉因子によって変貌した研究者を前に、ユウト達はそれぞれの力をぶつけます。
凄まじい衝撃が研究所を揺らした。
◇
シエルの剣。
シアの拳。
黒幕の異形の腕。
◇
三つの力が激突する。
◇
ドォォォォォォン!!
◇
床が砕けた。
壁が軋む。
衝撃波だけで周囲の瓦礫が吹き飛ぶ。
「はぁっ!」
シエルが鋭く踏み込む。
白銀の軌跡。
剣閃が黒幕の腕を切り裂いた。
鮮血が舞う。
「ほう」
黒幕が感心したように呟く。
「その年齢でその技量ですか」
「褒められても嬉しくないわ」
シエルは表情を変えない。
その横から。
「さすが瞬天っすね!」
「こんな時に…集中しなさい!」
シアの言葉の方が表情に変化が起きた
「問題ないっす!隙ありっす!」
シアが飛び込む。
黒い拳。
◇
ドゴォォッ!!
◇
黒幕の腹部へ直撃。
異形の身体が吹き飛んだ。
「よし!」
ユウトが思わず声を上げる。
だが次の瞬間黒い霧が傷口へ集まる。
◇
裂けた肉
砕けた骨
全てが再生していく
◇
「本当に面倒だな」
レオンが顔をしかめる。
黒幕は再び立ち上がる。
そして笑った。
「素晴らしい!やはり君達も普通ではありませんね」
その言葉にシエルとシアの表情が僅かに変わった。
黒幕は見逃さない。
「特に君達二人は」
視線が向けられる。
シエル
シア
「非常に興味深い」
嫌な予感がした。
ユウトは眉をひそめる。
黒幕の目だ。
あの目は研究対象を見つけた時の目だ。
「お断りっす」
シアが即答した。
「研究される趣味はないっす」
「同感ね」
シエルも剣を構える。
黒幕は肩をすくめた。
「残念です」
そう言った瞬間男の姿が消えた。
「シエル!」
ユウトが叫ぶ。
だが遅い。
黒幕はすでにシエルの背後。
鋭い爪が振り下ろされる。
しかし
◇
ガキィィィィン!!
◇
金属音
シアの拳が爪を受け止めていた。
「女の子の顔に傷を付けるのは駄目っすよ」
笑うシア。
だがその足元の床は大きく陥没していた。
◇
重い。
想像以上に。
◇
「チッ」
初めて黒幕が舌打ちした。
その瞬間シエルの剣が閃く。
◇
斬撃。
追撃。
さらに追撃。
◇
黒幕の身体へ次々と傷が刻まれる。
「へぇ」
黒幕が後方へ飛ぶ。
その顔から笑みが消えていた。
「ここまでとは」
シエルが剣を構える。
シアが拳を鳴らす。
二人とも余裕はない。
だが押している。
確実に
黒幕は静かに二人を見つめた。
そしてゆっくりと懐へ手を伸ばす。
「やはり」
嫌な予感しかしない。
「実験を次の段階に進めましょう」
黒い液体が入った注射器。
ユウトの顔色が変わった。
「おい待て」
黒幕は笑う。
「研究とは常に挑戦ですから」
そして躊躇なく自らの首へ注射器を突き刺した。
第九十三話をお読みいただきありがとうございました!
シエルとシアの連携によって押され始めた黒幕。
しかし彼はまだ諦めていないようです。
研究者としての狂気が、さらなる変化を引き起こそうとしています。
次回、実験は新たな段階へ――。
それではまた次回!




