第九十二話 異形
研究所の黒幕がついに動き出しました。
終焉因子によって変貌したその姿は、人でも竜でもない異形の存在でした。
黒い霧が爆発する。
◇
ゴォォォォォォッ!!
◇
研究所を揺らす轟音。
全員が距離を取った。
黒い霧の中心で男の身体が変貌していく。
◇
筋肉が膨張する
骨が軋む
皮膚を突き破るように黒い鱗が現れた
腕は異様に肥大化し
指先は鋭い爪へと変わる
背中からは不完全な翼が生え始めていた
人間だが人間ではない
竜だが竜でもない
あまりにも歪な姿だった
◇
「うわぁ……」
ユウトが顔を引きつらせる。
「やっぱり気持ち悪い」
「主、本人の前っす」
「だから聞こえるように言ってるんだって」
「ブレないっすね……」
シアが呆れていた。
◇
その時男が目を開く。
赤黒い瞳。
そこには狂気しかなかった。
「素晴らしい」
男が自分の腕を見る。
「これが進化!これが可能性!これが人類の未来です!!」
「いや絶対違うだろ」
ユウトが即答した。
レオンも頷く。
「同意見だ」
珍しく意見が一致した。
男の眉が僅かに動く。
だがすぐに笑みへ変わる。
「理解できないのも無理はありません」
「先を行く者は常に孤独ですから」
「一人で勝手に孤独になってろ」
ユウトが吐き捨てる。
その瞬間、男の姿が消えた。
「なっ!?」
レオンが目を見開く。
速い。
次の瞬間。
◇
ドゴォォォォォン!!
◇
レオンの身体が吹き飛んだ。
「ぐっ……!」
壁へ叩きつけられる。
誰も反応できなかった。
男は元の位置へ戻っている。
「遅いですね」
まるで感想を述べるような口調。
シエルの表情が変わる。
「シア!」
「分かってるっす!」
二人が同時に飛び出した。
白銀の剣。
黒い拳。
左右から男を挟み込む。
だが男は笑った。
「そうでした。まずは君達からでしたね」
黒い霧がさらに膨れ上がる。
研究所全体が軋む。
激突の瞬間凄まじい衝撃が周囲を吹き飛ばした。
そして研究所最深部で本当の戦いが始まった。
第九十二話をお読みいただきありがとうございました!
ついに始まった黒幕との戦い。
終焉因子によって力を得た研究者は、自らを人類の進化形だと信じているようです。
しかし、その思想をユウト達が受け入れることはありません。
次回、本格的な戦闘が始まります。
それではまた次回!




