第九十話 研究者の執念
ついに姿を現した研究所の黒幕。
No.1の悲劇を生み出した張本人との対峙が始まります。
ドゴォォォォォン!!
◇
黒ローブの男が壁へ叩きつけられる。
石壁に大きな亀裂が走った。
◇
静寂。
◇
「ちょっと殴ってもいいか?」
ユウトが拳を下ろしながら言った。
「主……」
シアが呆れたように口を開く。
「もう殴ってるっす」
誰も反論できなかった。
「……あ」
ユウトも今気付いたような顔をした。
「まぁ細かいことはいいだろ」
「相手は多分よくないっす」
シアのツッコミが飛ぶ。
だがその空気は長く続かなかった。
パラパラと瓦礫が崩れ落ちる。
そして壁へめり込んでいた男がゆっくりと立ち上がった。
まるで何事もなかったかのように。
「素晴らしい」
男は笑っていた。
「実に素晴らしい」
その口元から血が流れている。
だが苦痛も怒りもない。
あるのは興味だけだった。
「普通の人間なら死んでるぞ」
レオンが剣を構える。
「もちろん普通ではありませんから」
男はあっさりと言った。
「私は研究者ですよ?」
「意味が分からん」
ユウトが即座に返す。
シアが何度も頷いていた。
「あーしもそう思うっす」
男は楽しそうに笑う。
「終焉因子」
その言葉に空気が変わった。
「人を次の段階へ導く力」
「限界を超えた進化」
「死を超越する可能性」
男の瞳が怪しく輝く。
「No.1は失敗でした」
「だが君は違う」
視線がユウトへ向く。
その目に宿るのは執着。狂気。
「君は完成形だ」
ユウトの背筋に嫌な寒気が走った。
「断る」
即答だった。
「まだ何も言ってませんよ?」
「聞く必要あるか?」
ユウトが顔をしかめる。
「絶対ろくでもないだろ」
シエルとシアが深く頷いた。
「その通りね」
「間違いないっす」
男は小さく肩をすくめた。
「残念です」
だがその笑みは消えない。
「では予定通り」
男が指を鳴らした。
その瞬間研究所全体が激しく揺れる。
◇
ゴゴゴゴゴゴゴ……
◇
「なっ!?」
レオンが周囲を見回す。
床に巨大な魔法陣が浮かび上がっていた。
男は静かに笑う。
「それでは第二実験を開始しましょう」
その言葉と共に男の周りから黒い霧が溢れ始めた。
第九十話をお読みいただきありがとうございました!
ついに黒幕との対面となりました。
被験体達を生み出した研究者。
そして彼が口にした「第二実験」とは。
それではまた次回!




