第八十五話 百年前の記憶
暴走する被験体No.1へ手を伸ばしたユウト。
その瞬間、彼の中へ流れ込んできたのは百年前の記憶でした。
ユウトの手がNo.1へ伸びる。
黒い霧が渦巻く。
誰も止められない。
「ユウト!」
シエルの叫びが聞こえた。
だがユウトは止まらない。
そして――
触れた
No.1の身体に。
◇
《純粋な終焉因子を供給開始》
補佐機構の声が響く。
◇
その瞬間だった。
世界が反転する。
「――っ!?」
視界が白く染まった。
◇
◇
◇
眩しい日差し。
青い空。
子供達の笑い声。
「兄ちゃん!」
小さな女の子が駆け寄ってくる。
その先にいたのは一人の青年だった。
優しそうな笑顔。
力仕事で鍛えられた身体。
そしてどこかNo.1に似た面影。
(まさか……)
ユウトは息を呑む。
青年は妹を抱き上げた。
「危ないだろ?」
「えへへー!」
無邪気な笑顔。
周囲の村人達も笑っている平和な光景だった。
「これはいったい…あいつの記憶?」
ユウトは呟いた。
その時だった。
村へ数人の研究員がやって来る。
◇
白衣。
そして胸元の紋章。
終焉竜研究所。
◇
「あなたにお願いがあります」
研究員が頭を下げる。
「村を救うためです」
青年は戸惑っていた。
だが。
「皆を守れるなら」
静かに頷いた。
◇
そして場面が変わる。
◇
研究所。
実験台。
苦痛。
悲鳴。
薬品。
終焉因子。
◇
断片的な映像が流れ込む。
「成功です!」
「適合率過去最高!」
「No.1だ!」
研究員達が歓喜していた。
青年も笑っていた。
自分が村を救えると信じて。
だがその笑顔は長く続かなかった。
◇
最後に見えたのは。
燃え盛る炎だった。
そして涙を流す青年の姿。
「やめろ……」
震える声。
「頼む……」
絶望に満ちた表情。
その先に何があったのかユウトはまだ見ていない。
だが分かってしまった。
これから見る記憶こそがNo.1を百年以上苦しめ続けた地獄なのだと。
◇
◇
◇
気付けばユウトは再び研究所に立っていた。
No.1の瞳から涙が流れている。
そしてその口が僅かに動いた。
「……たす……けて……」
第八十五話をお読みいただきありがとうございました!
No.1の記憶の断片が明らかになりました。
村を想い、人々を守ろうとした青年。
しかし彼を待っていたのは、あまりにも残酷な運命だったようです。
次回、百年前の悲劇の真相が語られます。
それではまた次回!




