第八十四話 救うために
暴走を続ける被験体No.1。
その圧倒的な力を前に苦戦するユウト達でしたが、彼の中にはまだ失われていない理性が残されているようで――。
「終焉因子が暴走しておる……!」
老人の声が響く。
黒い霧がNo.1の身体から溢れ出す。
研究所の壁が軋む。
床が震える。
周囲の空気そのものが歪み始めていた。
「まずいっす!」
シアが飛び退く。
黒い霧が触れた床が腐食していく。
見覚えのある光景だった。
「オーガの時と同じか……!」
ユウトが顔をしかめる。
だが規模が違う。
比べ物にならない。
No.1は苦しそうに頭を抱えていた。
「グアァァァァァ!!」
◇
叫び。
咆哮。
悲鳴。
◇
その全てが混ざっている。
「シエル!」
シアが呼びかける
「分かってる!」
二人が同時に飛び出した。
シエルの剣が閃く。
シアの拳が叩き込まれる。
だがNo.1は倒れない。
むしろ黒い霧が濃くなっていく。
「駄目っす!」
シアが叫ぶ。
「止まらない!」
その時
◇
《終焉因子共鳴率上昇》
補佐機構の声。
《対象との共鳴が安定化》
◇
ユウトは眉をひそめた。
(共鳴……)
またその言葉だ。
そして何故か分かる。
No.1が苦しんでいる理由も。
自分が何をすればいいのかも。
「ユウト?」
シエルが振り返る。
ユウトは一歩前へ出た。
「あいつを助ける」
静かな声だった。
「何?何を言ってるんだ!」
レオンが目を見開く。
「こいつは敵じゃない」
ユウトはNo.1を見つめる。
「被害者だ」
黒い霧の向こうNo.1の瞳から再び涙が零れていた。
「百年以上だぞ……」
ユウトが呟く。
「百年以上も苦しんできたんだ」
拳を握る。
「もう終わらせてやらないと駄目だろ」
誰も何も言わなかった。
その言葉には不思議な説得力があった。
No.1が再び咆哮する。
黒い霧が爆発的に膨れ上がった。
そしてユウトは走り出した。
「おい!」
レオンの声が聞こえる。
だが止まらない。
No.1へ向かう。
一直線に。
補佐機構が静かに告げた。
◇
《純粋な終焉因子の供給を推奨》
◇
その意味は分からない。
だが信じるしかなかった。
ユウトは暴走するNo.1へ手を伸ばした。
第八十四話をお読みいただきありがとうございました!
被験体No.1は本当に敵なのでしょうか。
百年以上苦しみ続けてきた彼の想い。
そしてユウトが選んだ答えとは――。
次回、終焉因子の共鳴が真実を映し出します。
それではまた次回!




