第八十一話 被験体No.1
研究所の奥で発見した複数の生命反応。
それは終焉因子によって歪められた被験体達でした。
しかし、彼らが恐れる存在がさらに奥で待ち受けているようで――。
まるで獣の瞳のような赤い光。
それが暗闇の奥で静かに揺れていた。
◇
ドン……
ドン……
ドン……
◇
重い足音が近付いてくる。
その度に空気が震えるようだった。
「来るぞ」
レオンが剣を構える。
シエルとシアも戦闘態勢に入った。
やがて暗闇からその姿が現れる。
「……なんだよあれ」
ユウトが息を呑む。
巨大だった。
二メートルを軽く超える巨体。
全身を灰色の皮膚が覆っている。
筋肉は異常なほど膨れ上がり。
右腕は人間の倍以上の大きさになっていた。
だが最も異様だったのは首元だった。
そこには古びた金属製の札。
◇
【被験体No.1】
◇
沈黙。
「一番最初の実験体……ということか」
レオンが呟く。
「いや」
老人が首を振る。
「違う」
その声は震えていた。
「最初の成功体じゃ」
全員の表情が変わる。
「成功体?あれが?」
シエルが眉をひそめる。
「あぁ」
老人は苦々しく答えた。
「研究者共が歓喜した存在じゃ」
「終焉因子との適合率が最も高かった」
「じゃが……」
◇
一拍。
◇
「最初に壊れた」
その瞬間だった。
No.1の赤い瞳がこちらを向く。
「ッ!」
嫌な寒気が走る。
次の瞬間。
ドォン!!
床が砕けた。
「速っ!?」
ユウトの目が見開かれる。
◇
一瞬だった。
◇
No.1がレオンの目の前に現れる。
「なっ!?」
レオンが剣を構える。
だが間に合わない。
巨大な拳が振り下ろされる。
その時。
「させない!」
シエルが飛び込んだ。
剣と拳が激突する。
◇
ガァン!!
◇
衝撃が広がる。
だがシエルの身体が吹き飛ばされた。
「シエル!」
ユウトが叫ぶ。
壁へ叩き付けられる直前。
シアが受け止めた。
「冗談じゃないっすよ……」
シアの顔から笑みが消えている。
それだけで強さが分かった。
今までの被験体とは格が違う。
No.1はゆっくりと周囲を見回した。
そしてその赤い瞳がユウトで止まる。
◇
ピクリ。
◇
No.1の身体が震えた。
「……?」
ユウトが首を傾げる。
するとNo.1の口が僅かに動いた。
「オ……」
かすれた声。
誰も聞き取れない。
だが補佐機構だけは反応した。
◇
《警告》
《対象が終焉因子に反応》
◇
ユウトの顔が引きつる。
嫌な予感しかしなかった。
No.1は再び拳を握る。
そして低い唸り声を上げた。
「グォォォォォォォ!!」
研究所全体が震える。
終焉同士の戦いの幕が上がった。
第八十一話をお読みいただきありがとうございました!
被験体達すら恐れる存在が姿を現しました。
研究所が百年前に滅びた理由。
そして終焉因子の真実も少しずつ見えてきています。
次回は被験体No.1との対峙です。
それではまた次回!




