第八十話 残された者達
研究所の奥で発見した複数の生命反応。
そこにいたのは、終焉因子によって歪められた被験体達でした。
そして彼らが恐れる存在が、さらに奥から姿を現そうとしていて――。
研究所の奥から大勢の足音が響き始めた。
◇
《生命反応 二十三》
◇
補佐機構の表示は変わらない。
「二十三って……」
シアが顔を引きつらせる。
「冗談ではなさそうじゃな」
老人が静かに呟いた。
やがて暗闇の向こうに人影が現れる。
一つ。
二つ。
三つ。
そして次々と。
全員が同じだった。
◇
灰色の肌。
歪な身体。
虚ろな瞳。
首には金属製の札。
◇
【被験体No.21】
【被験体No.32】
【被験体No.41】
◇
番号だけが違う。
◇
「おいおい……この数はさすがに…」
ユウトは思わず呟く。
まるで失敗作の群れだった。
「戦うのか?」
レオンが剣を握る。
だが老人は首を振った。
「やめておけ」
「何?」
「倒しても意味はない」
老人の表情は険しい。
「奴らは被害者じゃ。終焉因子に壊された人間達じゃよ」
その時一体の被験体がこちらを見た。
虚ろな目。
だが一瞬だけ悲しそうに見えた。
「……」
ユウトは拳を握る。
胸の奥が妙に重かった。
すると被験体達が突然立ち止まる。
「止まった…どうして?」
シアが首を傾げる。
誰も動かない。
ただ一点。
研究所のさらに奥を見つめていた。
まるで何かを恐れているように。
「おかしい」
シエルが眉をひそめる。
「何かあるわ」
その瞬間。
被験体達が一斉に後退した。
怯えるように。
逃げるように。
「なっ!?」
レオンが目を見開く。
被験体達が恐れる存在。
そんなものがいるのか。
次の瞬間。
研究所のさらに奥から重い足音が響いた。
◇
ドン……
ドン……
ドン……
◇
被験体達とは明らかに違う圧倒的な存在感。
老人の顔色が変わる。
「まさか……」
震える声。
「生き残っておったのか」
その言葉と同時に暗闇の奥で二つの赤い光が灯った。
まるで獣の瞳のように。
第八十話をお読みいただきありがとうございました!
被験体達は敵であると同時に、終焉因子の被害者でもありました。
そして研究所の奥には、彼らすら恐れる存在が残されているようです。
次回はいよいよ、その正体が明らかになるかもしれません。
それではまた次回!




