第七十九話 失敗作
終焉竜研究所の奥へと進むユウト達。
そこで待っていたのは、百年前の実験の成れの果てでした。
ゆっくりと何かがこちらへ近付いてきていた。
◇
ギィ……
◇
不気味な音が響く。
まるで錆びた関節を無理やり動かしているようだった。
「来るぞ」
レオンが剣を構える。
シエルとシアも警戒を強める。
やがて暗闇の中からその姿が現れた。
「……人間?」
ユウトが呟く。
それは人型だった。
だが人間ではない。
◇
肌は灰色。
片腕は異様に肥大化している。
目は虚ろ。
そして首には古びた金属製の札が下がっていた。
◇
【被験体No.17】
◇
「被験体……」
レオンの表情が険しくなる。
百年前の実験体。
そんなものが生きているはずがない。
だが目の前の存在は確かに動いていた。
「グ……」
低い唸り声。
次の瞬間。
被験体が飛び出した。
「速い!」
レオンが迎撃する。
剣と巨大な腕が激突した。
◇
ガキィン!
◇
金属同士がぶつかったような音が響く。
「なっ!?」
レオンが目を見開く。
腕が硬すぎる。
人間とは思えない。
その隙にシエルが横から踏み込む。
「はぁっ!」
鋭い一撃。
だが被験体は倒れない。
身体を捻り強引に反撃してくる。
「ちっ」
シエルが距離を取る。
「面倒っすね!」
シアが飛び出した。
拳が被験体の腹へ突き刺さる。
◇
ドゴォッ!!
◇
轟音。
被験体の身体が吹き飛ぶ。
壁へ叩き付けられた。
勝負は決まった。
そう思った瞬間。
「……やっぱりまだ動くよな」
ユウトが苦笑いしながら呟いた。
被験体は立ち上がった。
だが様子がおかしい。
身体が崩れ始めていた。
「ガ……」
かすれた声。
そして
「……た……す……け……」
誰も動けなかった。
今、確かに言葉を発した。
「まさか」
シエルが息を呑む。
被験体の瞳に一瞬だけ理性が戻っていた。
「たす……け……」
それが最後だった。
被験体の身体は崩れ落ちる。
そして二度と動くことはなかった。
重い沈黙が流れる。
「これが……」
レオンが呟く。
「終焉因子の末路じゃ」
老人が静かに答えた。
誰も言葉を返せなかった。
その時補佐機構が反応する。
◇
《警告》
《生命反応を複数確認》
◇
ユウトの顔が引きつる。
「おいおい…まさか…冗談だろ……」
嫌な予感しかしない。
◇
《反応数》
《二十三》
◇
研究所の奥から大勢の足音が響き始めた。
第七十九話をお読みいただきありがとうございました!
研究所で初めて遭遇した実験体。
それは単なる魔物ではなく、終焉因子によって歪められた被害者でもありました。
そして研究所の奥には、まだ多くの反応が残されているようです。
それではまた次回!




