第七十四話 百年前の生き残り
廃村で出会った謎の老人。
彼は百年前の研究所を知る数少ない生き残りでした。
そして、その口から少しずつ真実が語られ始めます。
まるで何かに気付いているかのように老人は小さく笑った。
「一体何者だお前」
レオンが鋭い視線を向ける。
老人は肩を竦めた。
「ただの老人じゃよ」
「いくら何でも百年前を知っている老人がいるか」
レオンの一言はもっともだった。
「普通ならおらんじゃろうな」
老人はあっさり認めた。
「普通なら?」
ユウトが首を傾げる。
「儂は普通ではなくなったからの」
嫌な言い方だった。
シエルも眉をひそめる。
「研究所が関係しているの?」
老人は頷いた。
「そうじゃ。儂はあの研究所の実験体だった」
空気が凍り付く。
「実験体だと?」
レオンが目を見開く。
「正確には失敗作じゃな」
老人は苦笑した。
「寿命だけが狂った。だから百年以上生きておる」
誰も言葉を発せなかった。
百年。
成人を迎えた人間がその後そんな時間を生きるなど異常だ。
「じぃさん、終焉竜研究所って何をしていたんだ?」
ユウトが尋ねる。
老人の表情が曇る。
「奴らは終焉を求めておった」
「終焉?」
「終焉竜と言った方が正しいかの」
その名前が出た瞬間。
ユウトの心臓が跳ねた。
「研究者共は狂っておった。終焉竜の力を再現しようとしたのじゃ」
レオンが顔をしかめる。
「そんなことが可能なのか?」
「不可能だった」
老人は即答した。
「だから滅んだ」
重い一言だった。
「黒い霧もその結果なの?」
シエルが問う。
「あぁ」
老人は頷く。
「あれは失敗作じゃ」
「終焉竜の力を再現しようとして生まれた呪いの残骸」
ユウト達は顔を見合わせた。
◇
オーガ事件
結晶
調査員暴走
◇
全てが繋がる。
「なら黒ローブの男は研究所の関係者か」
老人はしばらく黙った。
そして
「分からん」
静かに首を振る。
「じゃが、もし奴が研究所にいるなら、百年前より遥かに危険じゃ」
その言葉に冗談は一切なかった。
「なぜだ?」
ユウトが尋ねる。
老人は遠くの山を見つめる。
「あの研究所は滅んでおらん」
全員の表情が変わる。
「なんだって?」
レオンが声を上げた。
「儂は見た。数日前、研究所の灯りをな」
◇
静寂。
◇
誰も言葉を発しない。
百年前に滅んだはずの研究所。
その灯りが今も灯っている。
嫌な予感しかしなかった。
「場所を教えてくれ」
レオンが真剣な表情で言う。
老人はしばらく黙り込む。
そして
「本気なのじゃな」
小さく息を吐いた。
「よかろう」
その目には諦めにも似た色が浮かんでいた。
「なら儂が案内しよう」
ユウト達は顔を見合わせる。
どうやら廃村での出会いは偶然ではなかったらしい。
第七十四話をお読みいただきありがとうございました!
老人の正体は、研究所の実験体でした。
百年前に滅んだはずの研究所。
ですが、その灯りは今も消えていないようです。
いよいよ研究所へ向かう時が近付いてきました。
それではまた次回!




