第七十三話 廃村の老人
ついに辿り着いた廃村。
そこで待っていたのは、一人の不思議な老人でした。
そして老人は、百年前の出来事を知っているようで――。
井戸の上に立つ老人。
誰も動かなかった。
いや。
◇
動けなかった。
◇
気配がなかったのだ。
補佐機構に言われなければ誰も存在に気付けなかっただろう。
「誰だ」
レオンが前へ出る。
老人はゆっくりとこちらを見る。
◇
白髪。
深い皺。
年齢は分からない。
だがその目だけは妙に鋭かった。
「それはこちらの台詞じゃな」
老人が口を開く。
「こんな場所に何の用じゃ」
その声は不思議とよく通った。
「調査だ」
レオンが答える。
「ギルド本部の者だ」
身分証を見せる。
老人はちらりと見る。
「ふむ」
それだけだった。
全く驚いた様子がない。
「で?」
続けて老人が問いた。
「終焉竜研究所について調べている」
その瞬間だった。
老人の表情が変わる。
ほんの僅かだが確かに変わった。
「……ほう」
空気が重くなる。
「知っているのか?」
レオンが問う。
老人は答えない。
代わりにゆっくりと空を見上げた。
「帰れ」
短い言葉だった。
「何?」
ユウトが眉をひそめる。
「帰れと言った」
老人は繰り返す。
「あそこへ行けば死ぬ」
シアが顔をしかめた。
「脅しっすか?」
「事実じゃ」
即答だった。
妙な説得力がある。
「理由は?」
今度はシエルが尋ねる。
老人はしばらく黙る。
そして。
「儂は見た」
低い声。
「村が滅ぶところを」
全員が息を呑んだ。
「百年以上前、研究所から流れ出た黒い霧が全てを飲み込んだ」
黒い霧。
ユウト達は顔を見合わせた。
今回の事件と同じだ。
「馬鹿な」
レオンが呟く。
「百年前でお前はなぜ今もここにいる?」
当然の疑問だった。
百年以上前を見た?
そんなはずがない。
老人は少し笑った。
「そう思うじゃろうな」
その笑みはどこか寂しげだった。
「だが事実じゃ」
その時補佐機構が反応する。
◇
《警告》
嫌な予感しかしない。
《対象の魔力量を再測定》
◇
「おいやめろ」
嫌な予感しかしない。
◇
《測定完了》
そして表示された文字を見てユウトは固まった。
《測定不能》
◇
「は?」
思わず声が漏れた。
今までそんな表示は見たことがない。
老人はそんなユウトを見て。
小さく笑った。
「面白い子じゃな」
まるで何かに気付いているかのように。
第七十三話をお読みいただきありがとうございました!
廃村で出会った謎の老人。
どうやら終焉竜研究所について何か知っているようです。
そして補佐機構でも測定できない存在とは……?
それではまた次回!




