第七話 銀髪の少女と終焉竜
第七話です!
地下遺跡編、少しずつドラゴン側の世界も見えてきます。
「終焉竜が……二体?」
銀髪の少女は、呆然とユウトたちを見つめていた。
白銀の翼。
透き通るような銀髪。
そして金色に近い赤い瞳。
人間に見える。
だが、違う。
ユウトの本能が告げていた。
「……ドラゴン?」
少女の瞳がわずかに揺れる。
「……分かるの?」
「え?」
「私が竜種だって」
ユウトは目を丸くした。
やっぱりそうなのか。
というか。
「人化してる!?」
ユウトは思わず叫んだ。
少女は少しだけ眉をひそめる。
「……あなた、まさか」
数秒の沈黙。
そして。
「まだ人化できないの?」
「ぐはっ」
刺さった。
めちゃくちゃ刺さった。
「いや、頑張ってる途中というか……!」
少女は無表情のままユウトを見つめる。
その視線が妙に痛い。
「終焉竜なのに?」
「そんなにおかしいのかよ……!」
理不尽だった。
終焉竜にも成長期間はある。
多分。
いや知らないけど。
すると黒竜が低く唸った。
『グルル』
銀髪の少女はそちらを見る。
そして静かに頷いた。
「……なるほど」
「え、会話できるの?」
「少しだけ」
「俺なんか『逃げろ』くらいしか分かんねぇぞ……」
「普通はそれくらい」
少女は静かに黒竜を見る。
「高位の竜種ほど、感覚共有は精密になる」
「へぇ……」
「人化できるほどなら、意思疎通も可能」
「ずるくない!?」
ユウトも竜語そのものはなんとなく理解できる。
だが、この少女はもっと深い部分まで読み取れているらしい。
少女は再びユウトを見る。
「名前は?」
「え?」
「個体名」
「あー……ユウト」
その瞬間。
少女の表情が、ほんの少しだけ固まった。
「……人みたいな名前ね」
「いや元人間だし」
「……本当に?」
「なんだよその反応」
少女はしばらく無言だった。
やがて小さく息を吐く。
「終焉竜が人間みたいな名前を持ってるなんて、初めて聞いた」
「俺も終焉竜になったの初めてだよ」
すると。
少女の口元が、ほんの少しだけ動いた。
「……変なの」
「今笑った!?」
「笑ってない」
「絶対笑った!!」
黒竜が『グル』と鳴いた。
なんか楽しそうだった。
ユウトは納得いかなかった。
その時。
ゴゴゴゴゴ……。
地下神殿が再び揺れ始める。
「……また?」
遺跡中央の黒い結晶が、強く発光していた。
空中に古代文字が浮かび上がる。
《継承者反応増加》
《適合率上昇》
銀髪の少女の表情が変わる。
「……継承者?」
彼女は驚いたようにユウトを見る。
「あなた、何をしたの?」
「いや、なんか触ったら勝手に……」
「……はぁ」
少女は額を押さえた。
初めて“呆れた”って感情が見えた。
「あなた、本当に終焉竜?」
「最近それ俺も思い始めてる」
その時だった。
黒い結晶から、突然魔力が溢れ出した。
ブワァッ!!
「うおっ!?」
ユウトは思わず後ずさる。
だが、銀髪の少女は冷静だった。
「下がって」
「え?」
「暴走する」
次の瞬間。
ドォォォォォン!!
結晶から巨大な魔力柱が噴き上がった。
神殿全体が揺れる。
壁の紋様が赤く発光する。
そして。
地下空間の奥から、低い咆哮が響いた。
『グルルルル……』
「……まだいるの!?」
ユウトは半泣きになった。
すると少女は目を細める。
「違う」
「え?」
「守護機構が起動した」
「守護……?」
その瞬間。
奥の闇の中で、巨大な赤い瞳がいくつも開いた。
一つじゃない。
二つでもない。
大量だった。
「……うそだろ」
ズシン。
ズシン。
重い足音。
闇の中から現れたのは、黒い竜型のゴーレムだった。
しかも一体ではない。
「多っ!!」
十体以上いる。
全てがこちらを見ていた。
すると頭の中へ声が響く。
《未登録個体を確認》
《防衛機構を起動します》
「えっ」
ユウトは周囲を見回した。
「未登録って誰!?」
銀髪の少女が静かに答える。
「……私」
「え?」
「この遺跡、終焉竜領域だから」
少女は小さく息を吐く。
そして腰に手を伸ばした。
いつの間にか、白銀の剣が握られている。
「つまり?」
「あなたのせいで、私は侵入者扱いされてる」
「理不尽すぎない!?」
直後。
ゴーレムたちが一斉に動き出した。
地面が揺れる。
赤い瞳が光る。
完全に戦闘モードだった。
ユウトは慌てて火の粉を吐こうとする。
だが。
少女が片手で制した。
「下がって」
「え?」
「あなた、まだ弱いから」
「またそれぇ!?」
少女は無表情のまま前へ出る。
銀髪がふわりと揺れた。
そして。
彼女の背後に、巨大な白銀の竜の幻影が現れる。
圧倒的な魔力。
神殿の空気が震える。
ユウトは目を見開いた。
「……かっこよ」
少女は剣を構える。
そして静かに言った。
「見てなさい。
本物の竜の戦い方を教えてあげる」
新キャラ登場回でした。
ユウト、また強そうなのに囲まれています。




