第六十九話 黒ローブの男
暴走した調査員の救出には成功しました。
ですが事件はまだ終わっていません。
調査員が見たという黒いローブの男。その正体が少しずつ明らかになろうとしていました。
隔離区画には重い沈黙が流れていた。
誰もが調査員の言葉を待っている。
「黒いローブの男……だと?」
レオンが静かに尋ねた。
調査員は弱々しく頷く。
「結晶を……調べていたんです……」
息も絶え絶えだった。
「最初は何もありませんでした」
「ですが……」
調査員の顔が青ざめる。
思い出したくない記憶なのだろう。
「ある日、突然声が聞こえたんです」
「声?」
ユウトが眉をひそめる。
「あぁ……」
調査員は震えていた。
「頭の中に直接……」
「もっと調べろ。真実を知りたくないか」
「そんな声でした」
部屋の空気が重くなる。
「・・・幻術の類かしら」
シエルが呟く。
「最初は私もそう思いました」
調査員が答える。
「ですが違った」
「気付いた時には目の前に立っていたんです」
ぞくり。
嫌な寒気が走った。
「黒ローブの男が」
誰も言葉を発しない。
「顔は見えたのか?」
レオンが問う。
調査員は首を振った。
「見えませんでした」
「まるで影のようで……」
「何をされた?」
エルドが尋ねる。
調査員は目を閉じる。
そして。
「結晶を見せられました」
「結晶?」
「あの石と同じです」
全員の視線が交わる。
やはり結晶が鍵だ。
「その後は?」
レオンが尋ねる。
「覚えていません」
「気付いたら黒い霧の中でした」
そこまで言うと。
調査員は苦しそうに咳き込んだ。
「無理するな」
レオンが肩を支える。
「十分だ」
だが調査員は首を横に振った。
「一つだけ……」
かすれた声。
「思い出しました」
全員が息を呑む。
「その男は……」
「何だ?」
レオンが問う。
調査員は震える声で答えた。
「研究所と言っていました」
「研究所?」
ユウトが眉をひそめる。
「あぁ……終焉竜研究所と……」
部屋の空気が凍り付いた。
「なんだって?」
エルドが立ち上がる。
今までで一番大きな反応だった。
「知っているのか?」
レオンが問う。
エルドは険しい顔で頷く。
「知っている」
◇
一拍。
◇
「百年以上前に消滅したはずの施設だ」
ユウト達は顔を見合わせた。
まただ。
◇
百年前。
禁忌研究者。
終焉竜。
◇
全てが繋がり始めている。
どうやら。
次に向かう場所が決まったらしい。
第六十九話をお読みいただきありがとうございました!
黒いローブの男の存在が明らかになりました。
そして「終焉竜研究所」という気になる名前も登場です。
どうやら事件の根は思っていた以上に深そうです。
それではまた次回!




