第六十話 隔離区画
王都ギルド本部の地下隔離区画。
そこには暴走した調査員が収容されていました。
どうやら思っていたより状況は深刻なようです。
重い扉がゆっくりと開く。
ギギギ……
金属が擦れる音が響いた。
その瞬間だった。
ユウトは顔をしかめる。
「うわ……」
嫌な気配が溢れている。
まるであの黒い霧の中にいるようだった。
「主?」
シアが不思議そうに見る。
「いる…」
ユウトは奥を睨む。
「すぐそこに」
レオンの表情が僅かに変わった。
「本当に分かるのか」
「あぁ」
嫌でも分かる。
魔力感知が悲鳴を上げていた。
そして。
三人は隔離区画へ足を踏み入れる。
部屋の中央、そこに男はいた。
鎖で拘束されている。
だが普通ではなかった。
◇
「……なんだよあれ」
ユウトが呟く。
男の皮膚は黒く変色していた。
血管のようなものが全身を這っている。
瞳は真っ黒。
そして身体から黒い靄が漏れていた。
「人間……よね?」
シアですら少し引いていた。
「元はな…」
レオンが答える。
「調査員の一人だ」
その時、男の首がゆっくりと動く。
◇
ギギッ――
◇
嫌な音だった。
そして男の視線がユウトを捉える。
次の瞬間。
「終焉」
部屋の空気が凍った。
「見つけた」
男が笑う。不自然なほど大きく。口角が吊り上がる。
「おい」
ユウトが眉をひそめる。
「なんで俺を知ってる」
だが返事はなかった。
代わりに男の身体が膨れ上がる。
「レオン!」
シエルが叫ぶ。
「下がって!」
次の瞬間。
◇
バキィィィン!!
◇
鎖が弾け飛んだ。
「なっ!?」
レオンが目を見開く。
拘束具が破壊される。
男の身体から黒い霧が噴き出した。
「グアアアアアアアアア!!」
もはや人の声ではない。
「主!」
「分かってる!」
ユウトが前へ出る。
シアも飛び出した。
「ぶっ飛ばすっす!」
拳を振り抜く。
直撃。
だが男は吹き飛びながらも立ち上がる。
「再生した!?」
レオンが驚愕する。
砕けた腕が黒い霧と共に元へ戻っていく。
「やっぱりオーガと同じだ」
ユウトが舌打ちする。
その時だった。
シエルが前へ出る。
「少し試すわ」
「シエル?」
彼女は男の腕を掴んだ。
瞬間。
◇
ジジジッ――
◇
黒い霧が音を立てる。
「グアァァァァァ!!」
男が苦しみ始めた。
「なに!?」
レオンが目を見開く。
シエル自身も驚いていた。
「やっぱり……」
黒い霧が薄くなっていく。
ほんの少しだけ。
だが確実に弱まっていた。
そして。
ユウト達はまだ知らない。
その力が後に魔力汚染事件の鍵になることを。
第六十話をお読みいただきありがとうございました!
魔力汚染された調査員と対面しました。
シアの拳でも止まりません。
そしてシエルにだけ変化が起きました。
それではまた次回!




