第五十七話 緊急依頼
黒い結晶は王都のギルド本部へ送られました。
これでひと安心。
……だと思っていました。
翌日。
◇
ユウトたちは冒険者ギルドへ呼び出されていた。
「何かあったのか?」
受付へ向かうと。
フィーナの表情は珍しく硬かった。
「実は……」
嫌な予感がした。
最近嫌な予感が当たる。
「先日送った結晶なんですが」
やっぱりそれか。
「本部へ到着したそうです」
「おう!よかったじゃない!」
「そして」
一拍。
「事件が起きました」
「ですよねぇ」
何故か驚かなかった。
「ですよねぇって、もっと驚いてくださいよ」
フィーナにツッコまれた。
「最近そういう流れが多いんだよ」
慣れとは恐ろしい。
「それで?」
シエルが先を促す。
「結晶の調査を担当していた職員が暴走しました」
空気が変わる。
「暴走?」
「はい」
フィーナは頷く。
「突然理性を失ったようになり、複数の職員を襲ったそうです」
「死者は?」
「幸い死者は出ていません」
それは良かった。
「ですが」
フィーナの声が重くなる。
「現在も鎮圧できていません」
「は?」
ギルド本部だ。強い冒険者だっているはず。
「本部の冒険者が対応しています」
「それなのになんでだよ?」
「異常な再生能力が確認されたそうです」
「!」「!」「!」
ユウト達は顔を見合わせた。
◇
オーガ。
黒い霧。
嫌な記憶が蘇る。
◇
「あの時と同じじゃないか?」
「おそらく」
シエルも頷く。
その時だった。
「その通りだ」
低い声が響く。
奥の部屋から現れたのは。
ギルド長ダンだった。
「ダンさん」
「よう!励んでるか?」
ダンは軽く手を上げる。
だが表情は真剣だった。
「話は聞いていた」
どうやら最初から奥で聞いていたらしい。
「今回の件はこの街だけの問題じゃねぇ」
ダンは依頼書を机へ置く。
そこには。
◇
【特別調査依頼】
◇
そう書かれていた。
「本部からの正式依頼だ」
「俺たちに?」
「結晶を見つけたのはお前たちだからな」
理屈は通る。嫌だけど。
「正直面倒事はご免…」
「金貨五十枚。報酬は金貨五十枚だ」
食い気味にダンが割り込む
「やりましょう!」
即答だった。
「相変わらず分かりやすいな」
ダンが苦笑する。
「主」
「何だよ」
「分かりやすすぎっす」
否定できない。
その時だった。
補佐機構が反応する。
◇
《緊急案件を確認》
さらに表示が続く。
《魔力汚染拡大の可能性》
《対応を推奨》
◇
「お前もか」
補佐機構まで乗り気だった。
「あなたの事だからどうせ、でしょ?」
シエルが尋ねる。
ユウトは依頼書を見る。
そして。
「行くしかないだろ」
困っている人がいる。
原因も気になる。
何より放っておくとまた面倒なことになりそうだった。
「決まりね」
「決まりっす!」
ダンはそんな三人を見て小さく笑う。
「無茶はするなよ」
「そりゃぁ我身が一番かわいいからな」
「そこはもうちょっと…まぁいいや。頼んだぜ!」
「フィーナ!」
「はい」
「王都までの手配をしてやれ」
「分かりました」
こうして。
ユウトたちは初めて王都へ向かうことになった。
◇
その頃。
王都ギルド本部地下隔離区画。
鎖に繋がれた男がゆっくりと顔を上げる。
瞳は真っ黒だった。
「終焉……」
男が呟く。
「見つけた」
その口元が不気味に歪んだ。
第五十七話をお読みいただきありがとうございました!
結晶は無事に届きました。
無事だったのはそこまででした。
次回、ユウトたちは王都へ向かいます!
それではまた次回!




