第五十六話 魔力汚染結晶
黒ローブを追った先で見つけた黒い結晶。
危険らしいですが、とりあえず持ち帰ることにしました。
たぶん大丈夫です。
黒い結晶を前に。
三人は無言だった。
◇
「で、どうするの?これ」
最初に口を開いたのはシエルだった。
「どうするって?」
「持ち帰るの?」
確かに問題だった。
補佐機構は危険と言っていた。
だからといって。
放置するのもどうかと思う。
「主なら持って帰るっす」
「なんでそう思うんだ」
「主だからっす」
酷い理由だった。
だが。
「仕方ない。持って帰るか」
「せめてこれに入れておきましょう」
シエルは小さな革袋を取出した。
◇
そのままギルドへ戻る。
受付にはフィーナがいた。
「おや?」
フィーナが首を傾げる。
「また何かありました?」
「またって何だ」
「最近のユウトさんは大体何か持ってきますから」
「否定できないっす」
「否定できないわね」
味方がいなかった。
「それで今回は?」
ユウトは包みを机へ置く。
「これ」
袋を開くと黒い結晶が姿を現した。
「これは……?」
フィーナも知らないらしい。
しばらく観察する。
だが。
「見たことありません」
予想通りだった。
「本部に送れるか?」
「それは可能です」
フィーナは頷く。
「黒い霧の件もありますし、一緒に報告しておきます」
「頼む」
今のところそれが最善だろう。
その時だった。
シエルが結晶へ手を伸ばす。
「ん?」
指先が触れる。
次の瞬間。
◇
ジジッ――
◇
小さな音が響いた。
「え?」
結晶の表面が僅かに白くなる。
だが一瞬だった。
すぐに元へ戻る。
「今何かした?」
ユウトが尋ねる。
「分からないわ」
シエル自身も首を傾げていた。
「でも」
一拍置く。
「帯びていた魔力が少しだけ弱くなった気がした」
「弱くなった?」
「気のせいかもしれないけど」
気のせいには思えなかった。
シエルが触れた瞬間だけ確かに何かが変わった。
だが。
今は答えがない。
「本部の返答待ちだな」
「そうね」
「お腹空いたっす」
「シアさんや、ご飯はさっき食べたでしょ?」
「あーしまだそんな年じゃないっす!」
シアは通常運転だった。
◇
その頃。
街の外れ。
黒ローブの男は通信魔道具を手にしていた。
「結晶は回収されました」
静かな声。
そして。
「対象は終焉反応を保持しています」
◇
沈黙。
◇
やがて。
魔道具の向こうから声が響く。
「引き続き監視せよ」
「はっ」
男は頭を下げる。
その目はどこか狂気を帯びていた。
第五十六話をお読みいただきありがとうございました!
黒い結晶はギルドへ預けました。
シエルは何か変化に気付きました。
そしてシアはお腹が空いていました。
それではまた次回!




