第四十九話 黒い霧
危険度Aのワイルドオーガ。
シエルもシアも余裕そうですが、ユウトだけは違いました。
そして、黒い霧がさらなる異変を引き起こします。
《危険度:A》
◇
「増えるなぁぁぁ!!」
ユウトの悲鳴が森に響く。
「主、うるさいっす」
「うるさくもなるだろ!」
さっきまでBだった。
今はAだ。
怖い。
普通に怖い。
その時。
ワイルドオーガが再び地面を蹴った。
ドォォン!!
巨体とは思えない速度。
「速っ!?」
ユウトが身構える。
しかし。
その前に。
「あーしが行くっす」
シアが一歩前へ出た。
「シア?」
珍しかった。
普段なら。
面白そうに眺めているだけなのに。
今は違う。
その目は真剣だった。
ワイルドオーガの拳が迫る。
シアは避けない。
そして。
バシィッ!!
片手で受け止めた。
「えぇ……お前もぉ?」
今日二回目だった。
語彙力が死ぬ音がした。
「なんでみんな受け止められるんだよ」
意味が分からない。
ワイルドオーガが暴れる。
だが。
シアは動かない。
まるで。
大人が子供を相手にしているようだった。
「やっぱりっす」
シアが呟く。
「何が?」
「この霧、嫌な感じがするっす」
相変わらず曖昧な表現だった。
だが。
その声には確かな警戒があった。
「知ってるのか?」
ユウトが尋ねる。
シアは少しだけ考える。
そして。
「知らないっす!」
「知らないのかよ!」
そこはいつも通りだった。
「でも嫌な感じはするっす!」
「その感じもう慣れてきたよ!」
相変わらずだった。
◇
その時。
ワイルドオーガの体から。
さらに黒い霧が溢れ出す。
「っ!」
今度はシエルも反応した。
表情が険しくなる。
「シア!」
「分かってるっす!」
二人が同時に動く。
その瞬間。
ワイルドオーガが苦しそうに咆哮した。
「……え?」
ユウトが目を見開く。
今の声。
怒りではない。
苦痛だった。
黒い霧が膨れ上がる。
そして。
補佐機構が告げた。
◇
《警告》
《対象の変異を確認》
◇
「変異?」
嫌な予感しかしなかった。
ワイルドオーガの肉体が膨張する。
筋肉が軋む。
骨が鳴る。
そして。
その背中から。
二本の黒い腕が生えた。
◇
「増えたぁぁぁ!!」
ユウトの叫びが森へ響いた。
第四十九話をお読みいただきありがとうございました!
危険度は増えました。
腕も増えました。
ユウトの悲鳴も増えました。
それではまた次回!




