第四十二話 語られる真実
玉座の間に現れた黒い影。
敵意はない。
だが、ただならぬ存在感を放っていた。
そしてユウトだけに聞こえる声が、少しずつ真実を語り始める。
『さてどこから話そうか』
黒い影の言葉。
その一言で空気が変わった。
◇
「いや待て」
ユウトが手を上げる。
「まずお前誰だよ」
そこからだった。
数秒の沈黙。
影は少しだけ考えるような仕草を見せた。
そして。
◇
『王…とでも言っておこうか』
◇
「雑だな」
思わずツッコんだ。
◇
シエルが首を傾げる。
「何を話しているの?」
「自分のこと王って言った」
「王?」
シエルの表情が険しくなる。
だが肝心の相手の声は聞こえていない。
「名前は?」
ユウトが尋ねる。
◇
『はて…そんなものもあったような気がするが』
「忘れたのかよ」
『長く眠りすぎたのでな』
妙に納得できる理由だった。
「主、その人何て言ってるんすか?」
ヴァルシアも気になるらしい。
「名前忘れたらしい」
「王なのにっすか?」
「それな」
影が少しだけ肩を落とした気がした。
『その反応は傷付くぞ』
「知らねぇよ」
初対面である。
しかしなぜだろう。
相手に敵意は感じない。
むしろどこか親しげですらあった。
その時影が静かに言った。
◇
『終焉竜か』
◇
ユウトの表情が変わる。
「知ってるのか?」
『当然だ。知らぬ方がおかしい』
王の声に迷いはなかった。
「世間じゃ災厄扱いみたいだけどな」
ユウトが肩を竦める。
自分ではよく分かっていない。
ただそういう扱いらしい。
◇
すると王は小さく笑った。
『今もそうなのか』
『変わらぬな』
「どういう意味だ?」
王は答えない。
代わりにどこか懐かしそうな声で呟いた。
『いつの時代も人は恐れる。理解できぬものを』
静かな言葉だった。
だがユウトはなぜかその言葉が妙に心に残った。
「終焉竜は違うって言いたいのか?」
王は少しだけ沈黙した。
そして。
『少なくともお前は違うのであろう?』
ユウトが固まる。
「は?」
『お前は終焉ではない』
『まだな』
「いや最後怖いな」
思わずツッコんだ。
その瞬間、王が初めて笑った気がした。
『そうであった。お前はそういうやつだったな』
「だから誰と勘違いしてるんだよ」
話が全然進まない。
だが王はゆっくりと首を振った。
◇
『勘違いではない。ただ、まだ思い出していないだけだ』
その言葉と同時に補佐機構が反応する。
◇
《同期率上昇》
《同期率5%》
◇
今までで最大の数値だった。
そして王の姿が少しだけ揺らぐ。
『時間がないな』
初めて焦ったような声だった。
『次にまた訪れる時までに…強くなれ』
「は?」
『お前が思っているより、世界は長く持たん』
その瞬間、黒い影が霧のように崩れ始める。
「待て!」
ユウトが声を上げる。
だが
王は最後に一言だけ残した。
◇
『頼む』
◇
そして。
黒い影は完全に消え去った。
静寂だけが残る。
第四十二話をお読みいただきありがとうございました!
王なのに名前を忘れていました。
本人はあまり気にしていないようです。
次回、ユウトたちは王の間を後にします。
たぶん。
それではまた次回!




