第四十話 玉座の足音
王の間の奥。
そこにあったのは、理解できない記憶と理解したくない気配でした。
そして、誰もいないはずの玉座から聞こえる足音。
少しずつ異変の核心へ近付いていきます。
カツン。
静寂の中に足音が響く。
三人は動けなかった。
誰もいないはずの玉座。
そこから確かに音が聞こえた。
◇
カツン。
もう一度。
今度は少しだけ近く感じる。
「聞こえたわよね?」
シエルが警戒を強める。
「ああ」
ユウトも頷く。
気のせいではない。
確実に誰かいる。
◇
しかし見えない。
玉座には誰も座っていない。
周囲にも人影はない。
なのに足音だけが響いている。
「……まずいっすね」
ヴァルシアが呟いた。
その声は今までになく真剣だった。
「お前がそう言うと本当にまずそうだな」
「本当にまずいっす」
否定しなかった。
◇
《同期率上昇》
《同期率2%》
補佐機構の声が響く。
「またか」
ユウトが顔をしかめる。
頭の奥が熱い。
何かが流れ込んでくる。
◇
玉座。
炎。
崩れゆく世界。
そして。
一人の男。
◇
「……誰だ?」
思わず呟く。
黒い外套を纏った男。
顔は見えない。
だが。
その姿を見た瞬間。
理解した。
◇
強い。
◇
そんな言葉では足りない。
存在そのものが規格外だった。
◇
《王の記憶を確認》
「っ!」
ユウトは頭を押さえる。
映像が流れ込む。
男が歩く。
それだけで大地が裂ける。
男が空を見る。
それだけで空間が震える。
◇
「どうしたの!?」
シエルが声を上げる。
だがユウトには聞こえない。
意識の大半が映像へ引き込まれていた。
◇
男が振り向く。
その瞬間だった。
◇
バチッ。
◇
映像が乱れる。
男と目が合った気がした。
◇
あり得ない。
これは記憶のはずだ。
過去の映像のはずだ。
なのに男は確かにこちらを見た。
『――ようやく』
声が聞こえた。
『見つけた』
「は?」
◇
ユウトの意識が現実へ引き戻される。
息が荒い。
心臓がうるさい。
「今の何?」
シエルが尋ねる。
「分からん」
本当に分からない。
ただ一つだけ確かなことがあった。
「見られてた」
ユウトの言葉に。
ヴァルシアの顔色が変わった。
「……主」
「なんだ?」
ヴァルシアは珍しく笑っていなかった。
「それ」
一拍置く。
「きっと聞いちゃ駄目なやつっす」
その瞬間
誰も座っていなかった玉座に黒い影が現れた。
第四十話をお読みいただきありがとうございました!
ヴァルシアが本気で焦っています。
次回、玉座の影とご対面です。
それではまた次回!




