第三十九話 王の記録
ついに辿り着いた王の間。
しかしそこは、常識の通用しない異質な空間でした。
補佐機構すら警告するその先に待つものとは――。
眩い光が収まる。
ユウトたちはゆっくりと目を開いた。
「……なんだここ」
思わず呟く。
◇
扉の先に広がっていたのは。
巨大な空間だった。
天井は見えない。
壁も見えない。
まるで夜空の中に立っているかのような空間。
足元だけが白い石でできていた。
「遺跡の中よね?」
シエルが周囲を見回す。
「そう見えないっすけどね」
ヴァルシアも珍しく落ち着かない様子だった。
◇
そして空間の中央。
遥か先に何かが見えた。
「あれは?」
ユウトが目を凝らす。
玉座だった。
巨大な玉座。
誰も座っていない。
はずだった。
◇
《高濃度反応を確認》
補佐機構の声が響く。
《警告》
《接近を推奨しません》
「え?」
ユウトは思わず足を止めた。
今までの補佐機構は、
危険を警告しても最終判断は任せてきた。
だが今回は違う。
明確に近付くなと言った。
◇
「どうしたの?」
シエルが尋ねる。
「補佐機構が近付くなって」
その瞬間。
シエルとヴァルシアの表情が変わった。
◇
「珍しいっすね」
ヴァルシアが呟く。
「知ってるのか?」
「いや」
首を振る。
「でも主のその何かが止めるのは珍しいと思うっす」
確かにそうだった。
しかしユウトは玉座を見る。
気になる。
ものすごく気になる。
補佐機構に止められるほどならなおさらだ。
◇
「行く気ね」
シエルが言う。
「ここまで来たら帰れないっしょ」
「でしょうね」
諦めたようにため息を吐く。
◇
三人はゆっくり進む。
一歩。
また一歩。
玉座との距離が縮まる。
すると周囲の景色が揺らいだ。
◇
夜空だと思っていたもの。
それは空ではなかった。
無数の光。
無数の文字。
無数の記憶。
理解できない何かが空間を埋め尽くしていた。
「……気持ち悪い」
シエルが顔をしかめる。
ヴァルシアも無言だった。
◇
《記録領域を確認》
《王の記録を確認》
補佐機構が告げる。
ユウトは眉をひそめた。
「記録?」
その瞬間。
視界に映像が流れ込んだ。
◇
炎。
崩壊する大地。
砕ける空。
叫び声。
無数の竜。
そして。
巨大な影。
◇
「っ!?」
ユウトが頭を押さえる。
「どうしたの!?」
シエルが駆け寄る。
しかし映像は止まらない。
◇
《王の記録を確認》
《同期率上昇》
《同期率1%》
◇
「待て待て待て」
ユウトは慌てる。
嫌な予感しかしない。
というか。
絶対面倒なやつだ。
◇
その時だった。
誰も座っていなかったはずの玉座。
そこから。
カツン。
小さな音が響いた。
三人の動きが止まる。
聞こえた。
確かに聞こえた。
足音だった。
誰もいないはずの玉座から。
もう一度。
カツン。
と。
第三十九話をお読みいただきありがとうございました!
王の間に到着しました。
なお補佐機構は珍しく「近付くな」と言っています。
ユウトは近付きました。
そういう主人公です。
それではまた次回!




